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欠けた茶碗に入れた白湯を一口飲んで大きく息を吐き出す。
「うまいな。人が作ったものを食べるのは久しぶりだ」
目を閉じて味わうように白湯を飲む光鬼にハナの心臓はドキドキしはじめる。
ただの白湯をこれほど美味しそうに飲んでくれた人は今までいなかった。
ずっと山の暮らしてきた光鬼は、もしかしたら孤独だったのかもしれない。
「ハナには料理を教える必要はなさそうだな。十分美味しいから」
山菜のおひたしを口に運んで光鬼は言う。
その優しさに胸の奥が熱くなる気がした。
相手は鬼なのに、なにを考えているの?
自分の不潔な考えをかき消すように光鬼から視線をそらせる。
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