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「若い男」
その声にハナが息を飲むのがわかり、武雄は足を止めて振り向いた。
言葉を発したのは血を流した鬼だった。
右まぶたの上を切られたようで、閉じられている。
「ハナを頼む。俺の大切な人だ」
その声は優しかった。
人間にどれだけ攻撃されても決して反撃しないどころか、ハナのことを大切に思っている男の声だった。
鬼の体から感じられる雰囲気は、とても恐ろしいものではない。
「……ハナにとってはどうなんだ」
武雄はその場に立ち止まったまま、そう聞いた。
ハナは泣き出してしまいそうな顔をしているが、グッとこらえている。
……強くなったな。
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