36人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「ごちそうさま。
よしさんと、はつさんのこと頼んだねー」
「有難うございました」
店の入り口で、ぺこりと新田さまのほうに向かってお辞儀をすると深呼吸して、
入り口のドアを閉めた。
閉店後の後片付けをすると、おじちゃんが「余りものだけど、たんとお食べ」っと、
パックにいろいろと詰め込んでくれた、お惣菜とご飯を詰め込んでくれる。
このお店をアタシが手伝うようになったのは、実に間抜けな話。
ストリートミュージシャンなんて言っても、それだけじゃお金は稼げない。
楽器を買うには食事を切り詰めなきゃいけないし……、
お金がないと住む場所にも困っちゃう。
それで無理がたたって貧血起こして座り込んじゃったのが、
おじちゃんと、おばちゃんの居たこの店の前だった。
おばちゃんの声が、亡くなったおばあちゃんの声と何処か重なってしまって、
アタシは、ぬくもりに縋るようにお世話になってしまってる。
おじちゃんも、おばちゃんも常連さんに、「孫が手伝ってくれてる」なんて言っちゃうもんだから、
一部のお客さんには勘違いしてる人もいて。
だけど、そんな勘違いも心地よく感じるアタシがいた。
最初のコメントを投稿しよう!