1.誰もいなくなった箱庭 - 如月 -

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紫煙を燻らせながら、イライラした時間を何とかやり過ごす。 「如月……」 アタシの名を呼びながら、澪は近づいてきてアタシの傍のケースからタバコを一本抜き取る。 すかさず、ライターを手に取って澪のタバコに火をつけると、美味しそうに咥えながら煙を吐き出した。 天城真梛斗(あまぎ まなと)3歳年上のアタシの彼氏だった人。 突っ張って、やけになってたアタシをあの日まで、支え続けてくれた。 アタシを包み込んでくれた。 だけど今は、触れたくてももういない。 ばーばが居なくなって、アタシの箱庭に誰もいなくなった。 再び、アタシの箱庭に踏み込んでくれた存在が真梛斗。 だけど、また独りになった。 「澪、何処に出かける?  タバコも切れそうだし、そろそろ美容液も切れそう」 澪に声をかけるとアタシは、床に転がってるシャツとGパンを拾い上げて、 手早く袖を通すと床に座り込んで、メイクを始めた。 そんなアタシを見ながら、澪も同じように服を身に着けてメイクポーチを開いて、 ひたすら出掛ける準備を始める。 30分後、準備が終わったアタシたちは買い物がてら、 まだ残暑厳しい街の中をプラプラと散策した。
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