1.誰もいなくなった箱庭 - 如月 -

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この街は、真梛斗との思い出が強すぎる。 今でもアイツと一緒に歩いた場所、アイツが事故った場所には近づくことが出来ない。 そんなアタシに澪は文句も言わずに、どんな遠回りも黙って付き合ってくれる。 ただ何となく街の中を歩いて、流されるように買い物をして、 なんでもなく生活しているように装う。 抜け殻になったアタシを知られたくないから。 誰かに声をかけられたら、声を弾ませて何時ものアタシを演じる。 演じられてるはずなのに、何処か違和感が残る。 「んじゃ、如月。  また顔出すわ」 気が付いたら澪と夕方まで、街の中を歩いてた。 駅の改札で澪と別れると、近所のコンビニでタバコを注文する。 『きさ、また煙草?  吸いすぎだよ』 そう言ってアタシの指から、タバコを取り上げる手はもうない。 アイツの手を切り取って、もっと早くにアタシの体に巻き付けてたら……、 アタシは今も満たされてたのかな? ふと脳裏に浮かぶ、そんな歌詞を思いだしながら、 アタシは「バカみたい」と小さく呟いた。
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