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この街は、真梛斗との思い出が強すぎる。
今でもアイツと一緒に歩いた場所、アイツが事故った場所には近づくことが出来ない。
そんなアタシに澪は文句も言わずに、どんな遠回りも黙って付き合ってくれる。
ただ何となく街の中を歩いて、流されるように買い物をして、
なんでもなく生活しているように装う。
抜け殻になったアタシを知られたくないから。
誰かに声をかけられたら、声を弾ませて何時ものアタシを演じる。
演じられてるはずなのに、何処か違和感が残る。
「んじゃ、如月。
また顔出すわ」
気が付いたら澪と夕方まで、街の中を歩いてた。
駅の改札で澪と別れると、近所のコンビニでタバコを注文する。
『きさ、また煙草?
吸いすぎだよ』
そう言ってアタシの指から、タバコを取り上げる手はもうない。
アイツの手を切り取って、もっと早くにアタシの体に巻き付けてたら……、
アタシは今も満たされてたのかな?
ふと脳裏に浮かぶ、そんな歌詞を思いだしながら、
アタシは「バカみたい」と小さく呟いた。
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