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ラブマイセルフ
――ふうん。面白いじゃん。
巷で話題になっていたアニメ映画『湯上の歪んだ高校生活』を観賞し終えた私は、何となく落ち着かない心境のまま、テレビのリモコンを置いた。
エンドロールで確かに見た。原作は小説だった。それも誰でも投稿可能な小説サイトの作品。要するに、それが私でも良かったのかも知れない、そう思うと羨望でも感傷でもない、不安にも似た度し難い感情が芽生えた。
……しかし、良い作品だった。主人公のひねくれた性格が面白かったし、最終的に素直な考え方に至るストーリーは、ストレートだがわかり易く、心に響くものがある。特別な境遇でもイケメン設定でもない主人公像は、万人に共感されうる。SNSでバズっていたのも頷ける。
いいなあ。こんな作品が書けたら良いのに。
小説を書き、小説家を目指す者にとって、そう憧憬してしまうのは当然のことだろう。
――でも、私はこの感情が大嫌いだ。
ある種の「負け」に他ならないから。有名アスリートが言っていたように「憧れてしまっては超えられない」のだ。
人の作品に魅了され、書く意欲を掻き立てられる。それはきっと模倣を生むし、自分の個性を殺しにかかると思う。
それを故意に行って、いかにも「世間ウケしますよ」みたいなタイプの作家もいるが、そういった方々も初めからそうしていた訳ではないだろう。自分の独自性に限界を覚えた挙げ句、ある程度のフォーマットの中でなら力を発揮できるという「割り切り」を経て、そういう作風になったのだろう。
私はまだ17歳。華のJKだ。
独自性を諦めるには若すぎるし、猿真似みたいな作品なんて書きたくない。私なりの私だけの作品で、読んだ人に共感してもらえるようになりたいし、なれると信じている。
だから私は、基本的に他の人の作品を読まないし、観ない。
今回はちょっとしたマーケティングのつもりで、久々に他人の作品を観たが、やはり面白さ以上に悔しさや、焦りが生まれてしまった。観るんじゃなかった。
私は私なりに、私としてやっていくべきだ。改めてそう思った。
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