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「あ、でも恭輔、お盆は実家に帰省しないの?」
「あー……うん。考えてない」
「そうなの? 連休に行ったくらいだからてっきりお盆にも帰ると思っていたんだけれど」
「まぁ、少し時期はずれるんだけどその内帰るよ」
「? そうなんだ」
何故か少し歯切れの悪くなった恭輔が気になったけれど、すぐに流星群についての話に戻ったので帰省の話を一旦忘れることになった。
──まさかこの時、恭輔があんなことを考えていて、だから帰省しなかっただなんて……この時の私は全然知る由もなかったのだった。
そして待ちに待った流星群観測の日。
流星群が流れ始めるのがこの日の夜半から明日未明ということで夜に近くの山の展望台までレンタカーでやって来た。
山の頂上付近にある展望台には私たちの車の他にも何台か止まっていて、目的は同じなのかなと思ったりした。
「はい、杏奈のミルクティー」
「ありがとう」
時間になるまで車の中で待機するためにコンビニで色んな物を買い込んでいた。
「23時か……まだまだ時間、かかるかも」
恭輔は携帯で流星群に関する情報を観ていた。
「予想では明日の午前3、4時くらいだって」
「わぁ、先は長いね」
「ん、ちょっと早く来過ぎたかな。ごめんね」
「ううん、こういうのも楽しいよ」
「そっか」
夏場で蒸し暑かったけれど山の中だからか汗だくになる程に暑くはなく、窓を開けていれば快適に過ごせた。
虫が入って来ないように明かりは点けていなかったけれど、それがかえって非日常的な空間を醸し出していて心が浮足立った。
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