411人が本棚に入れています
本棚に追加
「そっか……そっかそっか」
「ねぇ、恭輔。何か隠している?」
「え」
「なんだか変だよ? 何かあった?」
「いや、何もないよ。うん、ないない」
「……」
(怪し過ぎる)
恭輔はよく私のことを隅々まで解っているというけれど、私だって恭輔のことは誰よりも解っている自負がある。
(絶対に何か隠している)
ただ、そうは思うけれどあえて追及するような真似はしない。もちろん真実が知りたいと思う気持ちで溢れまくっているけれど、でも言いたくないことを無理矢理訊き出してまで知りたいとは思わなかった。
「杏奈? 怒った?」
「ううん、怒ってないよ」
「本当?」
「本当」
私は暗闇で見えているかどうかわからないけれどとびきりの笑顔を恭輔に向けていた。
少しぎこちない空気が流れた時間もあったけれど、流星群が流れ始めるだろう時間になるまで私と恭輔は他愛のない話で盛り上がった。
車の中で流星群がやって来るのを待つこと数時間──。
『もしかして……来た?』
『あれ、違う?』
流星群が流れ始めると予測された時間になると車から降りた数人が展望台デッキでささめいていた。
私たちも車から降りデッキに向かおうとしたその時、やんわりと握られていた手が急に力強く引かれた。
「こっち」と言いながら繋がれている恭輔の掌が熱くなっているのを感じた。
「え、何処に行くの?」
私の問い掛けに恭輔は答えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!