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促されるまま恭輔について行くと展望台デッキとは反対側の小さな丘に出た。其処は明かりがなく薄ぼんやりとした暗闇が広がっている空間があるだけだった。
そのぽっかり空いた丘には人がいなかった。だけど展望台デッキと同様、遮るものが何もなかったから目の前には美しい星空が果てしなく広がっていた。
「わぁー、星がキラキラ瞬いている」
流星群とは違うけれど夏の星座を形どっている夜空は白金の光を放っていてとても幻想的だった。
「杏奈」
「ん?」
気が付けば恭輔は芝生の上に座っていてトントンと隣に座るように促していた。ゆっくりと恭輔の隣に腰を下ろしてまた夜空を見上げた。
「はぁ……本当、綺麗……」
「……」
「普通の星空がこんなに綺麗だったら流星群ってどれだけ綺麗なんだろうね」
「……」
「恭輔?」
「……」
先刻から私の会話に対する返答がない。不思議に思い恭輔の方を見れば、恭輔は上ではなく下を見つめていた。
(恭輔?)
いよいよどうしたのだろうと思い心配が頂点に達した。声を掛けていいのかどうか分からなくて私も何も喋ることが出来なくなった。
(えぇ……なんだろう、どうしちゃったの?)
ジッと地面を見つめている恭輔を見つめるだけの私。
そんな時間が何分続いたか分からない頃、不意に目の端にキラッと光るものが飛び込んで来た。視線を上に上げると星空にスッスッと光の筋が弧を描いているのを見た。
「えっ、もしかして流星群?!」
思わず立ち上がりそうになった体が急にグッと制された。
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