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そして私が恭輔と結婚するという情報は瞬く間に会社中に広がった。もちろん庶務課で繰り広げられたような騒ぎになったことはいうまでもない。
「しっかし案外大胆だね、杏奈の旦那」
「まだ旦那じゃないわよ」
その日の終業後、志麻子に詳しい報告をするために飲みに誘った。
「って言いながらなーに嬉しそうなのよ」
「ふふっ。だって……それは、ねぇ」
「はぁぁぁ~~~なんか鳶に油揚げをさらわれた気分」
「ん?」
「なんで仕事辞めるのよ。いいじゃん続ければ。うち社内恋愛容認されているし時間だって融通してくれるでしょうに」
「まぁそうなんだろうけれど彼が家にいて欲しいって言うし、私もいたいって思うから」
「はぁぁ? 本当、骨抜きだね、あの子ども彼氏くんに」
「そういう風にいわないで。本当に素敵なんだから」
「……まぁね、杏奈が幸せになるならわたしは何も言わないよ」
「志麻子……」
「おめでとう、杏奈。今まで辛かった分、うんと幸せになるんだよ」
「~~~っ、あ゛、り゛がどう゛~~~志麻子ぉ~~~」
「ちょ、ちょっと、泣くな! 見てる、周りの人が好奇の目で見てるからぁ!」
私の不遇な恋愛事情を知っている親友の志麻子。いつも愚痴を訊いてもらって、慰めてもらって、その度に私は前に進めた。
(本当にありがとう、志麻子)
その日私は志麻子と心ゆくまで女同士の話をして盛り上がったのだった。
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