第九章 ハッピーな未来

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会社に結婚報告をしてから数日後、私の退職日が10月31日に決まった。 残り二か月を切っていたある日、恭輔が私に言った。 「杏奈、今度の連休俺の実家に行かない?」 「行きたい」 「それと杏奈の実家にも」 「え、うちは別にいいわよ。夏に行ったじゃない」 「でもやっぱりこれからはなるべく行き来した方がいいよ。家族になるんだし」 「恭輔……」 実は結婚を決めた盆休みの最終日に恭輔は私の実家に結婚の挨拶をしに訪れていた。私の実家は同じ区内にある近場だったので割と頻繁に行き来が出来ていた。 初めて恭輔を結婚相手と紹介した時の両親の顔が未だに忘れられない。恭輔のことを本気で中学生だと思い込んでしまった両親から私は『犯罪者』と罵られた。 恭輔がちゃんとした社会人で立派に勤めをしていると解ってもらうのにとても苦労したけれど、恭輔の誠実な人柄もあって両親は恭輔をとても気に入ってくれて結婚の話も何の障害もなく進められた。 「初日に静岡に行って一泊して、翌日早めに家を出て杏奈の実家に行こう」 「恭輔がいいならそうしようか」 「うん、そうしたい」 「……」 恭輔は家族を大切にする人だ。それは例え私の両親であっても。 (本当、文句のつけようもない人) 「ん? どうしたの、杏奈」 私がジッと見つめているのに気が付いた恭輔が顔を寄せて来る。 「大好き、恭輔」 想いが溢れてしまって思わず不意打ちのキスをしてしまった。
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