第九章 ハッピーな未来

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私と恭輔が結婚してから一か月ほど経ったとある休日。親展郵便を受け取った私はソファでテレビを観ていた恭輔に渡した。 「恭輔、郵便が届いていたよ」 「ん、ありがとう」 差出人に見覚えがあったけれどいまいち思い出せないでいると、封書の中身を見た恭輔が呟いた。 「ふぅん、未だに売れてるんだ」 「え、何が?」 「DVD」 「……」 そういわれてハッと気が付いた。 (そうかあの社名、恭輔が出演していたAVの制作会社!) それを思い出して少しモヤッとした気持ちが湧いた。 ──実は恭輔、意外にも小金持ちだった 付き合っている時は分からなかったけれど結婚してから生活費などお金に関する話をしたことで発覚した驚愕の事実。 大学生時代、映像会社を立ち上げた先輩に誘われてAVに出演していた恭輔はその報酬を全て貯金していた。その額は23歳の男子が持つには余りにも大き過ぎるものだった。 そして作品が売れる度に何パーセントか恭輔の元に入る様になっているのだと知った時、少し複雑な気持ちになった。 (私の知らない処で恭輔の濡れ場を見て悶えている人がいる) 嫉妬じみた気持ちを覚えるとそんなことで手に入るお金を使うのは気が引けると思ったものだった。だけど恭輔はそんなことを思う私の気持ちを察して言ってくれた。
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