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『そういえば杏奈さん。嬉しい報告は何かないかしら?』
「え、嬉しい報告……ですか?」
『えぇ。まぁ、こういうのは授かりものだしすぐにデキるものではないと分かっているのよ。でもね、どうしても期待しちゃうの。だって恭輔と杏奈さん、とっても仲がいいでしょう? だからわたしはいつでも準備万端だっていうことをね──』
「……」
(あぁ、そうか)
義母が何を期待しているのかわかってしまった私は申し訳なく「ご期待に沿えなくてすみません」と言うしかなった。
義母との電話を終えてから力なくソファに座り込んだ。
(お義母さん、早く孫の顔が見たいんだろうな)
もちろん『早く作りなさい』とか『子どもっていいわよ。特に孫っていう存在は可愛いらしいのよ、あー早く実感してみたい―』なんて露骨な言い方はしないけれど、期待しているのだろうという雰囲気はほんのり漂わせていた。
(子ども……かぁ)
結婚してからまだ三か月しか経っていないからピンとは来ないけれど、恭輔との子どもは欲しいという気持ちは常にあった。
だから今出来たとしても私は幸せで舞い上がってしまうと思うのだけれど……
(そういえば恭輔はどう思っているのかな)
ふたりで子どものことを話し合ったことはない。ただ結婚してからも恭輔は必ずゴムを着けて私を抱いていた。
それは無言の意思表示なのだろうか。子どもは要らない──という。
(いやいや、まさかね。恭輔って明らかに子ども好きそうだし)
「……」
(あぁ、ごちゃごちゃ悩むの嫌だ!)
これがいい機会だと思い、恭輔と子どもについての話し合いをしようと決めた。
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