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その日、帰宅した恭輔にご飯をよそいながら義母との話を振った。
「え、母さんそんなことを言ったの?」
「うん。あ、勿論プレッシャーを感じたとか嫌味に思ったとかは全然なくてね」
「全く……自分の時のことを棚に上げてよくいえたものだ」
「え? 自分のことを棚に上げてって?」
恭輔は軽く息を吐いてから話し始めた。
「父さんと母さんが駆け落ちして結婚したっていうのは知っているよね」
「えぇ。お義母さんの実家がお義父さんとの結婚を反対したから」
「で、母さんは父さんと結婚してすぐに俺を妊娠したの。ふたりはそれを凄く喜んだんだけど実際は出産して子育てが始まってからある種の後悔にさいなまれることになったんだよ」
「後悔?」
「ふたりきりで過ごす時間のなさに」
「は?」
「つまり母さんは父さんともっといちゃいちゃした時間を持ちたかったって言うんだよ。息子の俺の前で」
「えぇぇぇ」
「その反動が俺に手がかからなくなった頃から顕著に表れ始めて、俺がいてもところ構わずいちゃいちゃする様になったの。それこそ子どもに見せることは出来ない夜の営み以外の出来る限りのいちゃいちゃを」
「ははっ……そんなに愛し合っていたんだ、お義父さんとお義母さん」
訊く分には微笑ましいと思える光景だけれど息子の恭輔にとってははた迷惑な行動だったらしい。
「流石の俺も思春期に差し掛かった頃はそんな両親に反発しようと思っていた矢先に母さんが雅哉を妊娠してね」
「あ」
(そうか、だから雅哉くんや真己子ちゃんと歳が離れているんだ)
初めて静岡の実家に行った時に少し疑問に思ったことの答えが今、理解出来た。
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