第一章 フラれ女

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時季は春。私が勤める会社にも新入社員が入社する季節だ。 「佐東さん」 朝、出勤して来た課長に呼ばれたので掃除をしていた手を止め課長のデスクへと向かった。 「なんでしょう」 「今日から新入社員が其々の課に配属されるんだけどね、うちの課にもひとり入ることになったから」 「そうですか」 「でね、その子の面倒、佐東さんがみてくれるかな」 「私がですか?」 「うん。新卒入社だから年齢的には佐東さんと同い歳だから」 「同い歳……」 そうか、大学を卒業して入社したとなれば同い歳になるのか。 (同い歳でも私の方が四年先輩かぁ) 高卒で入社した私も四年目ともなればそれなりに中堅になるということだろうか。 「今時の若い子には同じくらい若い子をつけないとね。ボクらおじさん世代だとねぇ、話も合わないかもだし」 「……」 (ひょっとして押し付けられているのかな) 悪いように考えれば何かと面倒くさいとか思っているだろう厄介事を課の中で一番下っ端の私に回した──ということなのだろう。 (まぁ、いいか) 「分かりました。頑張ります」 「うん、助かるよ。まぁうちの課はそんなに覚えることもないだろうし。最初だけ念入りにお願いします」 「はい」 私が勤める玩具メーカー社の庶務課は他の課と比べて割と年齢層の高い人員が配置されていた。そのせいか課全体がのんびりとしていて、そんな雰囲気が私には心地よく感じられていた。
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