第一章 フラれ女

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課長との話を終え再び掃除に戻った。拭き残していた机を拭きながらそういえばと気が付いた。 (新入社員って男? 女?) 肝心の新人情報を訊かなかったのは痛恨のミスだ。 性別を訊こうとデスクを見るけれど其処にはもう課長の姿はなかった。 (あぁ、朝のコーヒータイムに行ってしまったか) 課長は出勤するとすぐに自販機コーナーに向かい、始業時間までコーヒーを飲む習慣があった。 (まぁいいか。出勤すれば分かることだし) そう思い直し残っていた掃除を終えたのだった。 掃除道具を仕舞いにフロアから出て給湯室の隣の部屋へと向かった。廊下を歩いていると前方に辺りをキョロキョロしている子がいた。 (ん? 誰? ──っていうか) 後ろ姿を見せるその人は細くて小さくてまるで中学生くらいの背格好だった。 (課の誰かの子どもさんかな) 忘れ物を届けに来た子ども──という認識でその子に声を掛けた。 「どうしたの? 迷子?」 「──え」 私の声に反応して振り返ったその子はやっぱり中学生くらいの幼い顔をした男の子だった。 (着ているの、スーツっぽいけど……制服のブレザー……だよね?) 少しだけ違和感があったけれどそれを打ち消して続けた。 「お父さんの忘れ物でも届けに来たのかな?」 「……」 「?」 その子は私を見て口を開けたまま茫然としてしまっている。
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