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しつこい誘いに困っていた私を助けてくれた恭輔にお礼を言った。
「九重くん、ありがとう。助かったわ」
今はふたりきりだけれど場所が社内の廊下だったので用心のために余所行きモードで話している。
「いえ。それよりも彼、あんな風によく誘って来るんですか?」
「ううん、今が初めて。というか喋るのだって以前社食で話した時から二回目だったし」
「……」
「どうしたの、九重くん」
「いえ、少しよくない噂を耳にしたので」
「よくない噂?」
「新入社員の数名の中で囁かれているんですけど……一橋くんが佐東さんを落とせるかどうか賭けをしているって」
「はぁ……またそういう噂」
「え」
「前からそういうのあったの。誰とでも寝る女なら自分にも落とせるって馬鹿馬鹿しい賭けがね」
「……」
「心配しないで。そういうの慣れているから。適当にあしらえる程度には強いから」
「……佐東さん」
少し表情を強張らせた恭輔がクッと顎をしゃくった。
(ついて来いってこと?)
アイコンタクトで気持ちを汲み取った私は先に行く恭輔の後を少し開けてついて行った。
誘われた場所はもはや社内逢引きの場所として定番となっていた給湯室隣の用具入れ部屋。入った瞬間、体をギュッと抱きしめられてキスされた。一度押し付けるだけのキスをした後は深く貪る激しいものに移行した。
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