第六章 カレシの実家

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「ん、きょ……恭、輔」 小さく響く水音に段々体が火照ってもどかしくなって来た。 (このままじゃ離れられなくなっちゃう) そう思い、なんとか理性を保とうとやんわりと恭輔から距離を取った。 「なんで離れるの」 「会社だよ、ここ」 「だって杏奈が好き過ぎて我慢、出来ない」 「もう、いつもそればかり」 「何、いけない? 杏奈にキスしたいって思うの」 「いけなくなんかないよ。私だってしたいって思うもん。だけどここは会社だし、一度触れちゃうと止まらなくなっちゃうじゃない? 私たち」 「杏奈も?」 「私も」 「一緒か」 「一緒だよ。だからもう少しだけ我慢しよう?」 私が精一杯の笑顔で笑い掛けると恭輔の頬は少し赤みを差した。 「はぁ……本当、参る。杏奈、外に出したくない」 「え」 「他の男の目に晒したくない。本当の意味で俺だけのものにしたい」 「!」 (おぉ……黒い恭輔降臨!) 時々性格が変わる恭輔の理由を知ってからはこういった場面で戸惑うことがなくなった。寧ろ違った一面を見られることに対してゾクゾクとした気持ちが競り上がって嬉しくなってしまうのだった。 私を心配してくれる恭輔と楽観視する私。そんな私たちの行く先にまさか一橋さんが深く絡んでこようとはこの時はまだ全然気が付かなかったのだった。
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