第六章 カレシの実家

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そして待ちに待った連休初日。恭輔が運転する車は静岡へ向かって高速を走らせていた。 (はぁぁぁ~~~幸せぇぇぇぇ~~~) これも夢に見た恋人シチュエーションのひとつ。運転する彼氏を助手席から眺めるシーン。 (童顔の恭輔がハンドル握っているのってめちゃくちゃ新鮮!) 人並みの大人がする行為を童顔の恭輔がするというだけでいちいちキュンキュンしてしまう私はどれだけ恭輔に溺れてしまっているのだろうかと時々考える。 (溺れ過ぎて魚にでもなりそう……) 恭輔という水がなければ窒息してしまいそう──なんて比喩をしてしまうくらい恭輔が大好きだった。 連休初日ということもあって高速道路は勿論、どこもかしこも人でいっぱいだった。そのせいで恭輔の実家に着いたのは出発から4時間後だった。 「んー、やーっと着いたぁ」 「運転お疲れ様。疲れていない?」 「平気。杏奈が色んなことしてくれたから」 「っ」 (渋滞中の車中で繰り広げられたあんな事やこんな事は決して口には出せない!) 思い出してポッと顔が熱くなった私の手が不意に引かれた。 「家、こっち」 「う、うん」 恭輔の家には駐車場がないということで家の近くの月極駐車場で借りている九重家のスペースに車を止めていた。 恭輔と手を繋いで歩く風景は見たことのないものだった。だけどなんだか胸が詰まってしまう。
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