第六章 カレシの実家

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(此処で恭輔は育ったんだなぁ……) そんなことを考えている内に「着いたよ。此処が俺の家」と恭輔が立ち止まった場所を見て驚いた。 「え……此処?」 其処は木造の古い店舗だった。見上げた看板には【九重商店】と書かれている。 「恭輔の家ってお店屋さんだったの?」 「うん」 「そうなんだ」 ちょっとした驚きを感じているといきなりお店の引き戸が開いて中から元気な声がした。 「あー、恭兄ぃ帰って来たー!」 「恭兄ちゃんーおかえりー」 「おぉ、雅哉に真己子。ただいま」 (えっ、恭兄ってことは……) 恭輔に群がる小学生くらいの男の子と女の子を見つめていると不意に男の子と目が合った。 「なっ…!」 「あ、あの、初めまして、私──」 「な、ななな、なんだよ、この美人のねぇちゃん!」 「へ」 「わぁ、綺麗な人ぉ。もしかしてこの人が恭兄ちゃんのお嫁さん?」 「……へ?」 自己紹介する間もなく何故か私の周りを騒ぎながらクルクル回っているふたりに何もいえなくなってしまう。 どうしたものかと戸惑っていると、更に大きな声を発した人がお店の中から出て来た。 「こぉら! 店先で騒ぐんじゃないの!」 「わぁー、ごめんなさーい」 「怒らないでー」 ふたりを窘めている人の顔を見た瞬間、胸がドキンと高鳴った。
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