第六章 カレシの実家

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「あった……けどぉ」 「今日ぐらいしなくてもいいじゃん。せっかく恭兄が帰って来たんだからー」 「宿題済ませてから思う存分遊んでもらいなさい」 「はぁい」 「ちぇ。しょーがないなー」 お母さんの言葉を受け入れて雅哉くんと真己子ちゃんは渋々階段を上がって行った。 「杏奈さん、着いた早々騒がしくてごめんなさいね」 「いえ。私ひとりっ子ですから弟や妹がいるのが羨ましくて。にぎやかで楽しいです」 「あら~よかったわね、恭輔。杏奈さん、雅哉や真己子にとっていいお姉さんになってくれそうで」 「まぁね」 (え…!) ごく自然な会話だったからつい聞き流してしまったけれど、今の会話はなんだか結婚することを認めてもらっているような、そんな感じが窺えて少しドキドキしてしまった。 「ところで父さんは? 今日、休みじゃなかったの」 「今、釣りに行ってるの。恭輔が帰って来るっていうから釣れたての魚を振る舞うんだってはりきってね」 「へぇ。下手の横好き、まだ続いているんだ」 「恭輔が家を出て行ってから多少腕を上げているわよ。5回行った内2回は何らか釣って来るもの」 「はははっ、まだそんな勝算なんだ」 恭輔とお母さんが話しているのをふんふん訊いていると、恭輔が何かに気が付いたようにハッとした顔をした。 「杏奈、ごめん。俺、ちゃんと家族の紹介していなかった」 「え……」 (そういえばそうだった。そんなことを忘れるほどに既に馴染んじゃっていたけれど) 「全くあんたは相変わらず抜けているんだから」なんてお母さんにいわれながら恭輔は家族のことを話してくれた。
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