第六章 カレシの実家

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「まずは母さんから。九重恭子(ここのえきょうこ)、42歳」 「こらっ、歳はいわなくていい!」 ペシンと頭を叩かれた恭輔を見ながら驚いた。 (えっ、42?! わ、若い) 恭輔の年齢から逆算して考えると恭輔を20歳前後で生んでいる計算になる。 「あの、ご結婚、早かったんですね」 「ん?」 思わず口に出してしまった私の言葉に一瞬お母さんはキョトンとしたけれど、すぐにニッコリ笑った。 「えぇ。お父さんとはね、出逢ってすぐに恋してすぐに結婚しちゃったから」 「凄い……情熱的」 「情熱的……ねぇ。まぁ駆け落ちするくらいなんだからそうなんだろうね」 「え、駆け落ち?!」 続く恭輔の言葉に激しく反応してしまった。 (駆け落ちってドラマや小説の中にしか存在しないと思っていた) 「わたしが若かったってこともあったんだろうけど、とにかく親兄弟に猛反対されてね。お父さんと一緒になるには駆け落ちするしかなかったの」 「凄いですね。とても愛し合っていたんですね」 「やだぁもう! わたしの恋バナなんていいのよ、もう」 「そうそう。その話、もう何十回と訊かされているから、耳にタコ」 「あら、まだ十何回しか話していなかった? じゃあもっと訊かせなくっちゃ」 「止めて! もうお腹いっぱいっ」 また始まった恭輔とお母さんの漫才みたいな会話。それを微笑ましく訊きながら思ったのは (そっか……そんな情熱的な恋愛の末に恭輔は生まれたんだ) 何故かそう思うと胸が熱くなって幸せな気持ちになった。
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