第六章 カレシの実家

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「父さんは九重浩輔(ここのえこうすけ)。母さんより10歳上の52」 (10歳上……年齢的なことがあって家族に反対されたのかな) 家族の紹介を続ける恭輔の話を訊きながら、つい先刻の駆け落ちの件が心に残ってしまっている。 「で、先刻の雅哉(まさや)真己子(まみこ)は小4と小3」 (恭輔とはずいぶん歳が離れているんだな) 一回り以上離れている幼い弟妹のことを思うと、何かそこにもドラマみたいな出来事があったのかも知れないとつい思ってしまった。 「九重商店は父さんが二代目なんだけど今は実質母さんが取り仕切っているんだ。父さんの本業は別の製菓工場の社員。この菓子屋だけじゃ生活がきついってことでこの店は母さん名義になっているんだ」 「そうなんだ」 駄菓子屋さんって素敵な商売だと思ったけれど、その内情を知れば意外と大変なのだと知ってしまった。 (……ん? でもそうしたら) 今はお母さんが切り盛りしているこの駄菓子屋さんは今後どうなるのだろうか。 (恭輔は今の会社に就職しているし雅哉くんがってことになるのかな) そんな事をぼんやりと考えているとドタドタと二階から一階に足音が駆け下りて来た。 「勉強、終わったー」 「宿題済ませたよ!」 「あら、意外と早かったのね。よし、じゃあまずはおやつを食べなさい」 「はぁい」 「ねぇねぇ、恭兄。今日は泊まって行くんだろう?」 「うん、その予定」 「やった! じゃあ一緒に風呂入ろうよ」 「あっ、あたしおねえちゃんと入りたい」 「えっ」 一気にその場が賑やかになり、私の考えていた色んなことはパッと消え去っていた。 その後、釣りから帰って来た恭輔のお父さんにも紹介されてお父さんが持ち帰った魚を中心にご馳走を振る舞われた。
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