第六章 カレシの実家

14/17
前へ
/127ページ
次へ
「ほら、杏奈さん。もっと食べて」 「はい、いただいています。──あ、お父さん、お酌します」 「お、お父さん?! かぁー、嬉し過ぎる。こんな美人さんにお酌されるとか」 「……お父さん、わたしもお酌、してあげますわよ」 「え……なんか顏が怖いよ? 恭子さん」 「お姉ちゃん、後であたしの宝物見せてあげるね」 「いいの? ありがとう」 「あ、おれもおれも! おれの秘蔵レアカード見せてあげる」 「雅哉くん、カードゲーム好きなの?」 「あぁーズルい! あたしが先にお姉ちゃんと遊ぶんだからぁー」 「おれだって遊びたい!」 「はは……おまえたち杏奈ばっかり取り合って。兄ちゃんだっているんだぞぉ」 とても和やかで賑やかな九重家での夕食はとても美味しくて楽しかった。まさかこんなに歓迎されるとは思ってもみなかったので少しこそばゆいくらいだ。 (なんだか私、幸せ者だな……) 好きな人の家族ともこうやって仲良くさせてもらえることがとても幸せで、ちょっと気を抜くと涙が零れそうになった。 そんな私にとってはいい意味で驚きと幸せとが沢山もらえた初めての彼氏の実家訪問は恙無く終わったのだった。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

408人が本棚に入れています
本棚に追加