第六章 カレシの実家

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ようやく一息ついた私たちは裸体のままベッドの上で寛いでいた。話の流れが何となく仕事についてになったので、こんな時に無粋かなと思いつつも気になっていたことを訊いてみた。 「ねぇ、恭輔。訊きたいことがあるんだけど」 「何」 「えーっと……実家の駄菓子屋さんのこと、なんだけど」 「実家?」 「うん。今は恭輔のお母さんが切り盛りしているじゃない? うんと先の話だとは思うけれど……その、いずれは……」 どう言えばいいのか少し言葉を探していると「店の跡継ぎのこと?」と恭輔は察してくれた。 「うん……。ずばりいうと、それ」 「気になっていたんだ」 「少しだけね。だって恭輔は今の会社に就職しているわけで、もし跡を継ぐならいずれは会社を辞めて実家に帰ることを考えているのかな、とか」 「それってさ、俺との結婚を見据えているってこと?」 「えっ!」 ストレートな返しにドキッとした。 (そ、そうなるのかな……この話の流れだと) まだ付き合い始めてから日が浅い癖に結婚を考えているとか思われたら恥ずかしく思った。 こういう女はきっと重いだろうな、なんて少し気まずくなった私はなんていえばウザがられないか必死に考えた。
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