第七章 付きまとうヒト

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恭輔は私にとって王子様。──ううん、ヒーローだった。 私が困っているのを瞬時に察して助けてくれる。だから隠し事は出来ない。ううん、する必要がない。私のどんな些細なことも恭輔に全てバレてしまうのだから。 だからといってそれが怖いと思ったことはない。寧ろ嬉しくて幸福だとさえ感じている。 私は恭輔に守られていると思えばなんでも出来る気がしたのだった。 一橋さんに脅され交際を強要された日の翌日。私は一橋さんを人気のない屋上に呼び出しきっぱりと断りの返事をした。 「──え」 「だから、お断りします」 「ははっ、何をいっているのか分かっていますか?」 「分かっています。あなたとお付き合いする気は全くありません。なので金輪際私に近づかないでください」 「はぁ……佐東さん。存外あなたは賢くないようだ。僕は言ったはずですよ。僕と付き合うことがあなたは勿論、九重にとっても最善のことなのだと。こんな返事をして九重を辞めさせたくはないでしょう?」 「いいえ、最善ではありません。私はあなたが嫌いです」 「口を慎んだ方がいい!」 「!」 一瞬、一橋さんが振り上げた腕が私の頬に下ろされるかと身構えた。しかしその腕が私に下ろされることはなかった。
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