第七章 付きまとうヒト

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(もしかしてボイスレコーダーを人事部の課長にでも聴かせるのかしら?) 一橋さんがどうやって恭輔を辞めさせるのか分からないけれど、人事のことは人事部の管轄だ。 (不当な解雇だって証拠になるのかな、あれが) 色んな考えを張り巡らせていると恭輔が立ち上がった。 「すみません。この書類を人事部に届けて来ます」 「あ、はい」 にこやかな笑顔を残して恭輔はフロアを出て行った。 「ん? 九重くん、人事部に行ったの?」 「そうみたいです」 訊いていないと思っていた私たちの会話を訊いていたらしい課長が話し掛けて来た。 「人事部に関する仕事なんか頼んだかなぁ」 「あ……九重くんの同期の人が九重くんに直接頼んだ用件みたいで……」 「へぇ。なんか何でも屋になりつつあるねぇ、彼」 「そう、ですね」 何とか課長とのやり取りを交わし、ホッと息を吐いた。 (あぁ~~~ドキドキする!) 恭輔が何を考えていて、どう行動するのか──この時の私は全く分かっていなかったのだった。
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