第八章 円満カイケツ

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【社長室】と書かれたプレートが掲げられている扉を叩くと中から女性秘書が出て来た。 「はい、なんでしょうか」 「社長に会いたいんですが」 「は? あの、アポイントメントはおありでしょうか」 「ないですけど至急の用があって会いたいんです」 「失礼ですがどちら様でしょうか」 「庶務課の九重と伝えていただければ分かります」 「……少々お待ちください」 秘書は怪訝そうな表情を浮かべながらも対応してくれた。一旦閉められた扉が再度開いたのはそれから一分もかからなかった。 「失礼いたしました。どうぞお入りください」 「失礼します」 中に通された俺は奥に鎮座しているもう一つの扉を目指して真っ直ぐ歩いた。目の前にある扉を叩けば中から『入りたまえ』と聞こえた。 再度「失礼します」と言いながら重厚な扉を開け、中に入ると中央奥に置かれている机で何かを書いていた社長が顔を上げた。
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