01 転生したみたい

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01 転生したみたい

ポカポカ陽気の温かい陽射にふかふかベッド。 ずっとこのまま寝て過ごしたい…。 そう思って居れば聞こえてきた声。 「 めっちゃ可愛いんで、一匹だけでも連れて帰って下さいな 」 「 ……物による 」 「 ははっ、きっとメロメロになっちゃいますよ 」 「( 誰かいる!? )」 このまま永眠とはいかないけど、ずっと昼寝をしていたいと思っていれば、男性二人組の様な声に自然と身体は反応して、目を覚ました。 「( んー……? )」 やけに視界は低くて、ボヤケてる事に疑問になって横を見れば、寄り添って寝てる可愛い子猫に気付く。 「( いやー!何この子猫!かわいぃ! )」 眠気は一気に吹っ飛んで、眠ってる白い子猫を触ろうと片手を伸ばせば、視界に写った白いもふもふに気付く…。 「( え…私の手……ネコになってない? )」 震える片手を眺めて、偽物か如何かを確認する為にちょっと鼻先に寄せれば、ちょっと香ばしい匂いがした。 「( 間違いなく…ネコの手だ…それも、子猫だし……ピンクの肉球… )」 桃色のぷにぷに食感の肉球を、ちょっと甘噛みしたり鼻先に押し当てて何度か確認していれば、此の部屋に入って来た者は口を開く。 「 さっきご飯食べ終えたばかりでお昼寝してたんですけど…起きちゃってますね 」  「 何匹産まれたと言ってたか? 」 「 4匹ですよ 」 「( はっ!!これって譲渡されるってこと!? )」 肉球を堪能してるより先に、出来るだけ良い人に貰われようと身体を動かそうとすれば、覚束ない足取りに上手く動けない事に気付く。 「( こんな…タイミングで前世の記憶が…前世? )」 フッと動くのを止めて、自分の前世が人間の女であることは確かだけど、それ以外の事が霧がかかった様に余り思い出せず、首を傾げる。 「 水無瀬(みなせ)さん、この子とかどうですか、クリームポイントで可愛いですよ。男の子ですけど 」 「 …雄か、部屋で飼うから雌がいい。しっこを撒き散らして欲しくはない 」 「 ははっ、去勢したら多少落ち着きますけどね…じゃ、メスなら、この寝てるクリームの子とそこで呆然としてる、シールポイントバイカラーの子かな 」 「 毛色は余り気にしてない。と言うか、猫に興味無い 」 そんな事を考えてる間に、男達は話を進めては、別の寝てる子猫の眠りを妨げ、片方の男が抱き上げては、 もう一人の男に差し出してる様子を見て、ちょっと怖くなって逃げる。 「( そういえば私…男性…苦手なんだ… )」 不意に蘇る記憶の中で、泣いてる女性と怒鳴ってるような男性の姿があった。 顔まではハッキリと分からないけど…。 あれは前世の両親で、母は父からDVを受けてたし、父は女遊びの激しい人だった。 私が中学に入る頃に離婚したけど、多少金のある父親側になったせいで…。 其れから学校生活もつまらなくて、家に帰ると酒に溺れて、いつも酔ってる父がいて…。 それが嫌で… 唯一の女友達の家に頻繁に泊まっていたんだ。 「( そう…思い出した…。高校卒業後に就職したけど…社畜過ぎて、過労で死んだんだ )」 月の残業時間が80時間を超えて、休む暇さえ無かった。 まともに食事も取れず、いつもエナジードリンクやプロテインバーばかり食べて…。 偏った食生活をしていた。 その結果、恋愛すらしなかったし… 彼氏どころか、好きになった人も居たこともない。 「( つまらない人間だったな…。今度はネコになって自由に生きたいと思ってたから、ネコなのかな… )」 二十代で死んだから、それ以上に生きてる人達の気持ちなんて分からないけど…。 ネコになりたい、それも…裕福な家で暮らす、 優雅な猫に…なんて思ったから、この姿になってしまったのだろう…と納得した。 「( なら、尚の事!ブサメンとビンボー人はごめんだ! )」 「 ラストはこの子ですね。ほら、逃げないで?水無瀬さんにお顔を見せてあげて 」 「( いやー!絶対にいやー!! )」 金持ちの元で暮したい!そう強く思うからこそ、近くにあったクッションに小さな爪を立て、身体が伸びても抵抗するも、それすら虚しく手を掴まれ、丁寧に取られればそのまま身体を抱かれた。 「( こわっ… )」 抱っこされた記憶なんて無いから、浮遊感に硬直すれば、男は片手で胸元を支え、反対の手でお尻あたりをセクハラすれば、自分より身長の高い男に向ける。 「 この子どうですか? 」 「 ………… 」 「( こっっわ……!! )」 眉間にシワを寄せ、鷹のような鋭い瞳孔をしてる男に硬直する。 只でさえ日本人離れした金色の目だから、更に怖い。 まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなれば、抱っこしてる男は笑った。 「 ラグドールですから、大人しいでしょう 」 「( 私…ラグドールって種類だったんだ… )」 只怖いだけで動かないのに、これがラグドール特有と言われても違うと思う。 絶対に違う…と否定していれば、何故かずっと手を下げたままの男は、小さく溜息を吐いて視線を下に向けた。 同じように見れば、私が入ってたそこは白サークルで囲まれていた。 「 血統書が付いてるかは知らんが、此のサイズなら貰い手はいるだろ。態々俺が引き取る必要もない 」 「 血統書は発行してますよ。雄が予定の雄で無いってだけで、あの雄も血統書付きのラグドールですから。それに、社長が言ってたんですよ?癒やしが欲しいって、だから猫を! 」 「 俺は生き物を飼ったことがない 」 「 大丈夫ですよ、飼えますって 」 「( 社長?私服だからそんな雰囲気なかった…てか、若っ… )」 少し長めのビジネスヘアーの黒髪に、Vネックのインナーの上から黒の七部袖を羽織ってる程度の男性は、社長らしい雰囲気は全く無く、どちらかと言えば目つきの悪い大学生に見える。 年齢も30代にはなって無さそうなぐらい、若々しく… 下手したら20代前半では?と思うぐらいだ。 それで社長と呼ばれるのだから、事業家と呼ばれる分類だろう。 「 餌はなんだ? 」 「 まだミルクですね。生後3ヶ月頃から離乳食に切り替わっていきますよ 」 「 …チビじゃねぇか 」 「 予約とか…どうですか? 」 「 拒否する。大体、生き物なんて毛を撒き散らして、臭いだけじゃないか 」 「 はは、生き物なんでね 」 「( 酷いこと言うな…この男… )」 社長だとしても、社員を社畜にさせる典型的な鬼だろうなって認識すれば、ちょっと好かないからふいっと顔を背けると、何かを察したらしく、抱き上げていた男は床へと下ろした。 「 因みに引退猫もいるんですよ。俺の実家…ブリーダーなので、既に避妊や去勢済みの子とかも、其方も見ませんか?大きさの把握にもいいでしょう、あと…この子達の雄猫もお見せしますね、おじいちゃんですけど 」 「 俺は連れて帰ると言ってねぇ… 」 「 いいじゃないですか。折角なら猫達と触れ合っていきましょうよ 」 彼等が離れていけば、覚束ない足取りでふかふかベッドの方へと迎えば、それは動いた。 「 おや…私の大事な娘、あまりうろついてはだめよ 」 「( ベッドだと思ってたのが…ママだった… )」 クリームカラーの綺麗な顔立ちをした、美人のママは、優しく微笑んで?は顔をやら首を舐めてきた。 「 ンンッ…! 」 「 キレイにしてあげる 」 「( 記憶が戻ろない頃は、こうしてされてたのかな… )」 何故、突然と前世の記憶が戻ったかは分からないけど… 此処がブリーダーの家で、そこに生まれたネコならば、私は金持ちで優しい人に貰われたいと思った。
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