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16 大型商業施設
最初に目についたのは、学生が服やらアクセサリーコーナー。
いつも身に着ける宝石がついたようなものではなく、どことなく学生っぽい雰囲気を壊さない程度だし、きっとリーズナブルなお値段だと思う。
「 このヘアピンかわいい、ネコ〜。でも、私は毛量が多いからな… 」
手に取ったヘアピンを鏡を見ながら、髪に寄せては、残念そうに置く。
「 ふふっ、色々ありますので。見て回ると良いですよ。因みに、お金の事はご心配なく。私が支払いできますので 」
「 そっか、分かった。好きなだけパパのお金使っちゃお 」
「 えぇ、その方がきっと喜ばれますよ 」
お金を勝手に使われて喜ばれる心理が分からないけど…。
良いと言われたなら、遠慮しない。
「( 一度やってみたかったんだ!お金持ち風に、あれもこれもーってやつ )」
「 あの店とか如何でしょうか? 」
「 いいね!楽しそう 」
周りを見ながら歩いていれば、クウに誘われた方へと行き、自動ドアを入れば脚が止まる。
「 なんで急に…全部ショーケースの中なの… 」
さっき迄の、手に持って買える!なんてところでは無くなったことに、こう言うのはちょっと違う気もするけど…。
入ってからには、見て行こうと思いショーケースの中を見ていく。
「 ふぁ、綺麗……( 価値ないけど… )」
指輪、ネックレス、イヤリング、時計。
高級感のあるジュエリーばかりで、見てるだけで楽しくなって尾が揺れていれば、脚が止まる。
「 このピンクのイヤリング可愛い… 」
「 パパラチアサファイア ですね。とてもいいと思いますよ 」
淡い透明度の高い、ピンクとオレンジの中間の様な色合いは、とても可愛けれど…
私のカラーではないと思った。
何気無く首に付いてるネックレスに触れては、軽く首を振った。
「 ん…可愛いけど、青色がいいな 」
「 では…ブルーサファイアの品を見せてくださいますか? 」
「 畏まりました。此方の方へどうぞ 」
「 ミャッ!?見せてって… 」
買うか分からないのに、そんなのいいの!?と思っていれば、ショーケースの奥にある室内の方に案内された為に、ちょっと戸惑いながらもクウと行けば、
ソファに座った後、紳士的な若い男性がガラスのテーブルの上へと並べ始めた。
「 イヤリングとヘアアクセサリー等を主に持ってきました 」
「 いっぱい…… 」
「 どうぞ、御手にとって下さい 」
「 はい…… 」
絶対高いだろうなーって思うけど、宝石のついたワンピースで、めちゃくちゃ遊びまくった時を考えるとマシだと思った。
ネコの耳に付ける気は無いから、ヘアピンを手に取れば、すっと向けられた鏡の前で見てみる。
「 あ、いいかも… 」
「 ブルーサファイアを中央に、それ以外をダイヤモンドで飾り付けしています 」
安物に見えない飾りだけど、目立ち過ぎない感じが好きだと思った。
ちらっと見れば、クウが頷いた為に向ける。
「 これ… 」
「 では、この列と…こちらにある全て頂けますか? 」
「 畏まりました 」
「 ンナァッ!?…ちょ、なにいって… 」
一つかと思いきやデザインが違うだけで、同じブルーサファイアとダイヤモンドが使われたヘアピンやかんざしみたいなのを言ったクウに驚けば、彼女は微笑みを向ける。
「 お似合いですよ。ラナが初めて宝石を選ばれたことをきっと水無瀬様はお喜びになられますよ 」
「( ならないと思うけど…あ、でも… )すみません…男性ものも見せてもらってもいいですか? 」
「 はい、もちろんですとも。どういうったものを…? 」
私が選んでも、パパの支払いになるから意味がない事は分かってるけど、
あの人は余り宝石をつけない人だから、あってもいいと思った。
クウには内緒にしてもらって、私が気に入るのを買って貰えば、それを転送機能を使って私の部屋に送ってもらえば、ショッピングを続ける。
「 買ってすぐに着けるのって下品かな?ダメかな? 」
「 ふふ、宜しいですよ。その場で時計やら服を交換して、いらないものを置いてく方もいますので…水無瀬様とか 」
「 それは処分に困る、御店の人が可哀想だね… 」
他人が困るって事を知らないのかなと思いながら、ガラスに反射する右側につけた二つのヘアピンを見ては笑っていれば、目に付いたものにテンションが上がる。
「 あ、待って待って。可愛いの見つけた! 」
直ぐに次の店へと入れば、そこにはネコのぬいぐるみが並んでいた。
「 可愛い…ラグドールかな?このサイズあったら、抱き締めて寝れるかも… 」
ラグドールの様なぬいぐるみを眺めて、どれにしようかなと眺めた後に手に取ろうと手を伸ばせば、クウはそっと手首に触れた。
「 へ? 」
「 私では、満足できませんか? 」
「 っ!! 」
少しだけ眉を下げて、潤んだような瞳を向けてきたクウの顔に、狡いと思ってはその手を握る。
「 クウが居れば十分です…。ぬいぐるみに浮気してごめんなさい… 」
「 ふふっ、分かればよろしいのです 」
「( 言わされた感あるなぁー…まぁいいか )」
満足そうな彼女を見ると、ぬいぐるみは買えなくてもいいやと思いそのまま手を取ったまま歩いて行く。
パパと出掛ける時とは違い、自分で好きに見て、買う物は楽しいと思った。
すぐに着れなくなると分かっていても服も新しいのを買った。
「 ふぅー、ちょっと休憩 」
「 この辺りに……。少し離れてますね。ネコ用のお水かミルクを買ってきますね。すみません…手持ちに用意してなくて… 」
「 うんん、いいよ。買ってきてー、ミルクがいいなぁ 」
「 畏まりました。すぐに買って来ます 」
少し人混みから外れた場所で座れば、クウは手持ちに無いことに眉を下げては、急いでその場を離れて行った。
「( 人間の脚で歩いたから…ちょっと、疲れた… )」
慣れないブーツを脱いで、足首が痛い感覚に耳を下げていれば、匂いと気配で顔を上げる。
「 …………… 」
「 っ……ラン……s……! 」
護衛ロボットの名前を言おうとしても、既に口と鼻を防がれて、意識が無かった。
「 やっとメイドと離れてくれた。待った甲斐があったぜ… 」
「( ラナ……? )」
一般人が多くいる大型商業施設だし、
クウが居るからと安心した私が馬鹿だった。
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