02 新しい飼い主

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玄関の前に立てば、先に扉を開く。 「 時間通りだな。来てくれてありがとう 」 「 こんにちは。いえいえ、改良した家を見て欲しいと言われたからには来るしかないでしょう!あ、青ちゃん連れてきましたよ 」 「 嗚呼…中に入ってくれ 」 「( えっ…えぇ、社員っていうからてっきり息子さんの同僚か後輩かと思ったけど…まさかの、社長!? )」 出迎えた人の匂いや声はしっかりと覚えてた為に驚いていれば、彼は息子さんを中へと招いた。 「 靴は脱いでくれ、全部カーペットにしたんだ。脚を滑らせるみたいだから 」 「 すご……。あ、お邪魔します 」 「( すご…… )」 息子さんと同じことを呟けば、玄関の灰色のカーペットの先には、ネコの脱走防止につけられたらしい新たな扉があり、 その先には灰色と黒のモダンな幾何学模様のロングカーペットが敷かれ、一番奥の部屋まで続いている。 「( 廊下ひろ……走り放題… )」 一番奥、そして左右に3ヶ所、 後階段がある造りのよう。 「 とりあえずリビング 」 入り口から一番手前の扉を開いた彼に続いて息子さんが入れば、キャリーバッグの隙間から見て唖然となった。 「( え、なに…別世界?? )」 「 廊下新しく造ったんですねー。流石、やることが違いますね 」 「 脱走防止な 」 「( 廊下作った???どういうこと… )」 彼等の話を聞く限り、先程の廊下…と言うか扉は、 本来無かったらしく…猫を飼うからと新しく各部屋の前に扉を取り付けたらしい。 その為に通路は狭めだが、一つ扉を開いた先には二十畳を優に超えるモノトーンが美しいリビング•ダイニングが広がっていた。 「 カウンターキッチンは、猫柵をつけた。部屋の雰囲気を壊さないよう縁は黒で、スライド式のガラス窓だ 」 「 社長の本気がすごい… 」 「 後は中庭に繋がる窓は二重にした。他の部屋も似たような感じだな 」 息子さんの語彙力が失われるぐらいの事に、流石に、私もポカーンとしていれば、彼は説明を続けた。 「 猫用ケージが居るらしいから特注した。横200、縦180だ 」 「 それ、猫用ケージだったんですね…何か別のインテリアかと思ってました… 」 「( ケージの中に…キャットタワーある………。まぁ横に…空気清浄機みたいなのもあるけど… )」 ケージの外には、空気清浄機みたいな黒い機械が置かれてるけど、其れでも中はモノトーンの部屋に合うような猫用ゲージの為に綺麗だ。 「 でも、網目広くないですか? 」 「 嗚呼、これ…ここを押すとクロスに変わるんだ 」 「 ……何この画期的なゲージ… 」 縦の棒だけだったゲージは、角の辺りを軽く触っただけで、バツ印の新たな棒が現れた。 それも丁度いい大きさだから、今の私でも抜けれないだろう。 「 もう少し小さければ無理だな…大丈夫だろ? 」 「 大丈夫と思います!このサイズは超えたので……多分 」 「 まぁ、脱走したら…もう少し大きくなってから使えばいい 」 「 ですね!この広さあったら、のびのびしてお留守番も楽しそうです 」 ネコは頭が通れば全部通るというからね…。 実際、隙間を見ると入ってみたくなる衝動にかられるから、あとで挑戦しようと思った。 「 じゃ、とりあえず入れてみますね 」 「 嗚呼 」 「 ほら、新しいお家だよ 」 「 ………… 」 此処はさっさと出た方がいいと判断するも、キャリーバッグ事ケージに入れられて、 入り口の扉が閉まった。 「( なんか……… )」 子猫の視線から見ると、色々大きくて高いから、一歩が踏み出せないでいた。 「 うーん、無理かな…。とりあえず今はこのままで、先に書いて欲しい書類があるので、頼めますか? 」 「 嗚呼、譲渡のやつだろ 」 「 そういう事です 」 私が苦戦してる間、彼等は中央がガラスのローテーブルの方に行き、ソファに腰を下ろせば息子さんは片手に持っていた鞄から書類を出すタイミングで、あるものに気付いた。 「 ん?このテーブルの下、丸い穴が空いてますね 」 「 嗚呼、本来なら引き出しになってるのだが…猫が入れる様に穴を空けたんだ 」 「 へー…本来なら引き出しだから、確認する為に開けるし、上がガラスだから…上からでも確認できる…。これは狭いところが好きな猫ちゃんは好きですね、欲しいな俺も 」 「( なにその面白そうな隙間!今度入る )」 楽しそうな仕掛けに、ちょっとだけ気になってキャリーバッグから顔を覗かせ、辺りを見る。 「( この家…他にも何かありそうだ… )」 そぉっと忍び足でキャリーバッグから出て、 ケージにしては広過ぎる内装を眺めては、まずは一番最初に目についた、ケージとほぼ同じ高さのキャットタワーを見上げた。 「( ……これを上まで登り切るの…もう少し大きくなってからじゃないと無理かも )」 キャットタワーの中央は全て爪研ぎ用になっていて、気合いを入れる為に一番下側で爪を研ぐ。 「 水無瀬さん、水無瀬さん。早速使ってますよ。かわいいっ 」 「 ん?あぁ…ほら、珈琲 」 「 あ、ありがとうございます 」 「( よし、気合い十分 )」 しっかりと爪研ぎしてから、再度見上げた後、どこから登れば一番効率がいいかと考え、キャットタワーの周りを歩いては、何度か見上げ、背を丸めて勢いをつける。 「 !!( とう!! )」 「 失敗した…。可愛い…がんばれっ 」 残念な事に、次の段差まで全然届かなかった為に、一度毛並みを整えて気持ちを落ち着かせた。 「( 大丈夫、やれば出来る。よし…! )」 毛繕いを数回してから、もう一度見上げては今度は尻尾を振って、助走を付けて跳ぶ。 「( トゥ!!お、おっ……!やば、おち…落ちる! )」 段差には届いたけど、乗れずにそのまま落下した。 「 ………大丈夫か? 」 「 大丈夫ですよー。あの高さなら 」 「( ……この挑戦はまた今度にしよう )」 諦めが早いのも肝心だと思い、もう少し大きくなってから頑張ろうと思い、キャットタワーの攻略を諦めた。 「( これはトイレ…… )」 次に見かけたトイレは、した後に自動で回転して砂が下に落ちる仕組みのやつだったけど… 残念な事に、その穴までが入れなかった。 「 あれは…ちょっと早かったですね。普通の低いタイプありますか?一応持ってきてますよ 」 「 いや、ある。屋根付きのが。それにする 」 トイレは屋根付きのちょっと広めの普通のになりました。 「( ネコを謳歌してるから、慣れたからね!でも、しっかり隠そう )」 「 初めての部屋なのに、ちゃんとおしっこしたんだね!良い子だねぇ、青ちゃん 」 「 …………… 」 「 ほら!水無瀬さんもしっかり褒めてください!大事なんですよ?数日トイレ行けない子も居るんだから 」 「 あ、あぁ……よくやった 」 トイレから出れば、何故か離れた場所にいた二人がガン見してたから恥ずかしかったけど、息子さんがしっかり褒めてくれたから胸を張った。 この男は、何故こんなにも顰めっ面なのだろうか…。 「( 後でちゃんと掃除してね! )」 「 ………( 教えても無いのに出来るもんなんだな。猫って賢い… )」
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