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03 広いリビングを探検
気を取り直して、二人は書類の記入を始めれば、私は彼等が背を向けてるのを良い事に隙間への挑戦を始めた。
「( この端っこ行けそう!よし… )」
大半、顔を突っ込んで確認したところ出られそうに無いぐらい小さい。
でも、角だけは2ヶ所分の隙間が空いてるのを発見して、顔を突っ込んだ後にいとも簡単に抜け出す事に成功した。
「( 私!まだ小さい! )」
大きいと言われてたけど、まだ細いようで…
脱走出来た事に誇らしげに歩いては、ハッとしてから、彼等の視界に映らないよう、
直ぐに端っこに移動し、周りを見ていく。
「( なんか隙間発見!こんな家でも埃があるか確認してあげよう )」
殆ど物すらなく、隙間も無いように見てるリビング•ダイニングだが、
唯一、嵌め込み式の薄いテレビの下にある、
テレビボードの裏に隙間を見つけ、其の中に顔を埋めてから中を見る。
「 ミィー……( おぉ…ネコって感じがする!小人になった気分だ。よい…しょ…… )」
薄暗い中でもハッキリと見える視界に興奮しては、進んでいく。
「 ん?今…変な所から声がしなかったか 」
「 え?あ…ケージに居なくないですか? 」
「 あの隙間を脱走したのか!? 」
「 え、ちょっ。青ちゃん!?どこに行ったの!? 」
此処だよ!と言う訳もなく、焦る男2人に内心笑ってから、更に進んでいく。
「( このテレビボード新しいかも…埃ない )」
肉球に埃がつくかと期待したけど、そんな事は無くて、残念そうに光が見える方まで進んで部屋をチラ見すれば、
ローテーブルの下やらケージの周りを仕切りと確認してる、彼等を見て尻尾は揺れる。
「( コンタクト探してる人みたい )」
「 青ちゃん〜? 」
「 外に出れる訳ねぇから……あ゙! 」
「 ミィッ( バレちゃった )」
あの顔が怖い男と目が合えば、眉間を寄せた為に急いで後ろへと下がる。
「 関屋!ボードの後ろだ! 」
「 え!?そんな隙間に…。あ、ほんと居た!青ちゃんおいでー 」
「( こっっっっわ…… )」
男2人が顔半分を壁で潰されて、隙間を覗いてる顔は、ホラー並みの恐怖があり、硬直する。
「( 今の顔…鏡で見た方がいいよ…。特に…目つき悪い社長さんの方… )」
鋭い瞳孔が私をガン見してくる来る事に、
石化でもしてる気分になっていれば、
いつの間にか背後にいたはずの息子くんが移動し、上から手を伸ばした。
「 ニャッ……( いや…遊んでたのに… )」
「 青ちゃんダメだよ。出られなくなっちゃうかも知れないじゃん… 」
首根っこの弛みを掴まれた猫掴みから、普通の抱っこに変われば、頭から背中を撫でる彼の手に、ムスッとする。
「 隙間もちゃんと掃除しないとな。左右を板で防ぐか… 」
「 この隙間なら大きくなっても入れそうですもんね…。でも、配線とか無いので、全然塞がなくてもいいと思いますよ 」
「 そういうものか? 」
「 えぇ、居ない時に此処を確認するようにすれば、すぐに見つかるかと 」
そう、この隙間は中々の広さがあった為に、もう少し大きくなっても余裕で入れると思った。
楽しい隠れ家が見つかった事に、直ぐに機嫌良くなるも息子さんはケージへと戻した。
「 それにしても…どこから出たんでしょうか… 」
「 四方の隙間だろうな。ワイヤーネットがある。とりあえずこれで塞ぐか 」
「 いいですね、そうしましょう 」
「( あぁーぁ……出られなくなった… )」
このワイヤーネットを登ったところで、他に隙間は無いのだから意味がない。
残念そうに、取り付けられるそれを眺めてから、ふてくしてキャリーバッグに戻りクッションで眠った。
いつの間にか時間が経過し、疲れて寝てしまってた私を起こさないように、
クッション事、ケージに設置してある猫用ベッドの上へと移動させられていた。
「 ミッ……( キャリーバッグじゃない……? )」
「 おはよう。青ちゃん…いや、ラナちゃん。ご飯食べようか?食べれるかなー 」
「( らな……? )」
私の方を向いて、名前らしい言葉を発音したのだから…
きっと、新しい名前だと言うのは分かるけど…
其れがどんな意味を持ってるのかは、分からなかった。
少しだけ傾げていれば、息子さんは一旦立ち上がって、社長さんに告げる。
「 餌は、市販の離乳食を上げてます。これを…半分ぐらいで、水無瀬さんが準備してくれた此の容器に入れます。やってみてください 」
「 ……あぁ 」
「( 流石に袋ぐらいは切って入れられ… )」
「「 …………… 」」
私は見てしまった……。
小さな袋を、開けようとした瞬間…
勢い余って中身が散るように吹き飛び、綺麗な部屋にぶち撒ける様子を。
そして、男二人の顔に…まぐろとささみベーストのミルク風味が付いたことを…見てしまった。
「 まずっ!! 」
「 社長…ハサミで切りましょうか。とりあえず、拭き取りましょう 」
「( この男……何も出来ないのでは…。よく生きてこれたね… )」
口元に付いたのを条件反射で舐めた社長は、猫の餌特有の生臭い感じが気に入らないのか、拭き取り始めた息子さんを余所目に、袋の成分を見始めた。
「 くっさ……。なんだこれ、腐った魚かニシンでも使ってんじゃねぇか。まぐろ?なわけ… 」
「 まぁまぁ、此のメーカーの1袋800円なので、中々いいものなんですよ 」
「 くせぇ……。手、洗ってくる 」
「( 顔は良いのに…口を開けば、残念だ…この人… )」
直ぐにキッチンで手を洗い、顔すらも其の場で洗った後にうがいをした彼を放置し、
息子さんは改めて別の餌を開けて、半分程を容器に入れた後、スプーンで砕いてから近くに寄せてきた。
「 ラナちゃん…大変な人に貰われたね… 」
「 ミッ…( そう思う……)」
「 なんか言ったか?うわっ、まだ口の中が気持ちワリィ… 」
「 なんでもないです 」
「 ミュッ( 美味しいけどな…ネコの味覚になってるせいかもしれないけど… )」
此れでも、試食する人間がいることを忘れちゃいけない。
ドックフードでさえ、人間が一度食べてみて食べれるか如何かを判断するのだから、そういう人達に申し訳無いよ。
「 フニャフニャ……( 社長なら、他の企業の努力も知るべきだね…うまうま )」
「 よく食えるな… 」
「 ミルク風味の方がよく食べてくれるのですよ…って、社長…その手に持ってるのなんですか… 」
「 ンニャ?( なに? )」
リビング•ダイニングを出て、別の場所で洗ってきた彼は、
一度カウンターキッチンの方にある冷蔵庫から何を取り出して持ってきたらしく、
ご飯を食べるのを止めて息子さんと共に見上げれば、ごく普通に告げた。
「 不味い離乳食よりマシかと思って、とりあえず…キャビアの缶と真空パックのフォアグラ持ってきた 」
「 人間用はダメですって! 」
「 ミャッ!( もう1回、猫の飼育方法調べてください!! )」
流石に、息子さんとともに否定すれば…
彼はパッケージへと視線を落とす。
「 だが、これ…猫用だぞ 」
「 猫用!!??え、子猫用ですか? 」
「 子猫?いや…猫用 」
「 じゃ……ダメです。成猫用はまだ早いので 」
「( この家に居たら…猫用キャビアとフォアグラが食べれるの!?それはちょっと、嬉しいかも!! )」
前世では絶対に食べれなかった高級食材に、ちょっと目を輝かせたけど、子猫だから無しになりました。
「 なら、御前のところの猫にやればいい 」
「 あ、貰います!ありがとうございます!! 」
「( 早く成猫になりたい……。キャビア…フォアグラ…なにそれ、美味しいの……? )」
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