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04 表示の違い
その日の夜、
恐らく…ミナセと言う男は、
栄養補助食品1本と無糖の珈琲で、夕食を終えた。
私には散々、食事が不味いとか言ってた割に本人の食事が疎かというのは如何なんだろうか。
「( てか…この食事で、体型維持…如何やってるんだろう )」
食事を終えてから、彼は風呂に入りに行ったらしく、戻って来た時には黒い高級感のあるシルクのバスローブを着ていた。
人が居ないからか、緩く結んでる為に浮き立つ鎖骨や厚い胸板等、男らしい体格をしてると思う。
其れこそ、細マッチョと言う分類なのだろう。
「( よっぽど筋トレしないと…此処までなら…まさか、プロテインしか取ってない。筋肉馬鹿!? )」
此の男が筋肉馬鹿なら、プロテインバーだけで終えるのは、少しだけ分かる気がすると小さく頷く。
「( この人…いつ寝るんだろうか…。まぁ、私は…寝るけど… )」
他の子猫は、夜になると活発的になるのは前の家でよく知ってるけど、
私は比較的に元人間らしく、夜はちゃんと寝る派だ。
男の視線が気になる中、クッションをふみふみして眠るポジションを確認し、
そして、いい感じになれば横たわる。
「( あ、眺めるの止めた…。そうそう、子猫のストレスになるから、見ない方が正しいんだよー )」
やっと彼がケージの側から離れた為に、安心して背伸びをしていれば、
一度離れたはずの彼は戻ってくれば、腕に掛けていた大きな黒い毛布を、ケージの上から被せていく。
「( なるほど、敢えて暗くしてくれるんだ…。まぁそれでも、ネコは夜はしっかり見えるけど…周りが見えないってだけで、ちょっと気分も違うかも… )」
家具が近くて、ごった返していた部屋とは違い、必要最低限の物しか置かれてない部屋。
広過ぎて、少し寂しい気分にもなってた為に丁度いい気遣いだと心の中で感謝した。
「 おやすみ、ラナ 」
「 ミッ…( おやすみー… )」
案外、ちゃんと名前を呼んでくれるんだと思いながら眠りについた。
リビング•ダイニングの明かりは消え、彼は何処かに立ち去ったのが、足音で分かったけれど、瞼を上げる気力はない。
けれど…
そう簡単に、新居になれる訳がない。
「 ミィー!!ミィー!( はっ、怖かった…… )」
ちゃんと眠ったはずなのに、死ぬ間際の様な悪夢を見て、それが怖くなってちょっと鳴いていれば、ゆっくりであり静かな足音が近づく。
「 ん……、どうした……? 」
「 ミィーィ!ミィー!( 嫌な夢を…見た… )」
起きてしまえば、夢なんて直ぐに忘れてしまうけれど、いつもならネコママが舐めて落ち着かせてくれるけど、今日はそんな事はない。
行き場の無い、不安感を如何すればいいか分からず、ケージの隙間から両手を出して彼に語り掛ければ、分かりやすく溜息を吐かれた。
「 はぁー……( 如何すればいいんだ )」
「( やばい……嫌われたかも… )」
くしゃっと髪を掻いた彼は、そのままケージの前から離れてしまった。
「( もういい!ヤケで鳴いてやる! )ミィー!ミィー!ミィィーイ!! )」
どの位、お隣さんが近いかわからないけど、近所迷惑を気にもせず、大声でヤケクソに鳴いていれば、彼はスマホを持って戻ってきた。
「 チビが鳴くんだ。ずっと。どうしたらいい? 」
「( ふぁ〜、夜泣きですねー。大丈夫だよーって言いながら、撫でてください )」
「 は?…ったく…… 」
通話を誰としてるか分からないけど、ケージを開け始めた彼の行動からして、息子さんだろうなとは思った。
「 ほら、少し出ろ 」
「 ミィー!( ちょっとそこに座って、話聞いーて! )」
足元に行き、乱れたバスローブの裾を軽く引っ掻いていれば、彼は眉間にシワを寄せたまましゃがみ込んだ。
「 ミッ…( そう、それで良く……ないいぃぃい!! )」
「 なっ、急にどこに行くんだ 」
しゃがんだのはいいけれど、股をガン開いた彼の股間を見てしまい、見てはいけない物があった事に気づいて、咄嗟にテレビボードの裏へと逃げた。
「( パンツ履いてなかった……!履きなよ!! )」
自宅だから…なのだろうけど、其れでも履いて欲しいと思い、
ネコの夜の視力を少し恨みたいぐらいちゃんと見てしまって、申し訳無い。
「 ラナ、隠れなくてもいいだろ? 」
昼間のように、敢えて引っ張り出すことなく…
敢えて語り掛けるような彼に、出来るだけ思考から消し去ろうと努力してから、ゆっくり姿を見せる。
「 良く出てきたな…。ほら、来い 」
「( 私は子犬ではないのだけど…、っ…! )」
ふっと、彼が差し出した手を見た後に顔を見上げれば、驚いた。
息子さんの前ではずっと顰めっ面だったのに、今向けてる表情は柔らかくて優しいものがある。
「( 目を細めて…眉寄せてなければ、優しい顔立ちしてるんだ…… )」
端麗な顔立ちに、少しだけ見惚れていれば彼の向けた手は、静かに握り拳を作った。
「 無理だ……( 小さくて壊れそうだ )」
「( え、なに、こわ…。殴られないでね?? )」
また眉間に皺を寄せた為に、この人は分からない。
でも、たった1匹のネコの為に、此処まで部屋を改造してくれる人は優しい人だろうと思い、改めて胡座を組んで座り直した膝元へと寄って、太腿へと片手を当てた。
「 ミャッ、ミャミャッ( とりあえず、話を聞いて!さっき悪夢みたんだよ! )」
「 餌が欲しいのか…?まぁ…5時間経ったからそろそろだろうな… 」
「 みゃぁー!( そーじゃなくて! )」
立ち上がった彼は、早々にご飯の準備をし、今度はハサミで切って几帳面にgを計ってから、更に乗せて置いた。
「 フニャフニャ( まぁ、食べるけど… )」
「 ふぁー……ねむ…… 」
ご飯を食べた後、彼なりに猫じゃらしを動かして遊んでくれたり、話し掛けたり、周りを彷徨いてはバスローブに戯れる私を只時折欠伸をしながら眺めていた。
それでも、やっぱり触ろうとしなかった。
なんせ、ケージに戻す時は雑誌を盾にして追い込んだのだからね!
「( 私は羊か……。ふん!でも、沢山遊んだから…今度はちゃんと寝れそう… )」
「( やっとケージに戻ってくれた…。もう、大丈夫か?泣かないか?まぁ、また聞こえれば…来ればいいか… )」
また毛布を掛けた彼が離れていけば、
今度こそ私は、朝までぐっすりと寝てた。
「 ミャゥウー!( ご飯ー!お腹空いたー! )」
「 早いな…ラテ。おはよう…。ふぁー…飯か……すぐ用意する 」
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