54人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
夜の残りである半分を貰って、しっかり食べて、朝の排泄を終えれば、彼は相変わらず眉間に皺を寄せて考え込むように眺めた後気合を入れた。
「( フレー、フレー!初のトイレ掃除!!
フレッフレッ、ミナセ!フレッフレッ、ミナセ! )」
「 なんでトイレ掃除をしてるのをガン見してるんだ…?まぁいいが…( ちゃんとしてるな、良かった )」
二重にしたゴミ袋を捨てた彼は、リビング•ダイニングを出てから、
恐らく洗面所に向かった彼は、幾分かして戻って来た。
「( 綺麗になってる。やっぱり共有トイレじゃないから、綺麗だね )」
少し覗いた後に、満足気にしてから入り口の方に行く。
「 出たいか?……トイレした後の手で…出るのか… 」
「( お、拭きます? )」
この人、潔癖症かなと思いながら彼が眉間にシワを寄せたのを見上げて見れば、
案の定、離れた後にウエットティッシュを持ってきた。
「 出る前に拭く 」
「( 昨日はそのまんまだったのに…あ、てか、その前に触れる?あ、無理そう?? )」
ウエットティッシュを片手に持ってるのはいいけど、どうやって拭けばいいのか迷ってる様子に、仕方無くケージの隙間から片手を出す。
「 あぁ、よし…そのままだ 」
猫じゃらし片手に振って、反対の手は拭けてるのか分からないぐらい、ちょんちょんと肉球を拭いた為に、気遣って反対側もしてあげる。
「 よし…。後ろ足は…もういい… 」
「( やったー!自由だぁー! )」
ゲートが開かれた競走馬の様に一斉に走り出し、絨毯の上を駆け回る。
「( 元気だな… )」
「( やっぱり広い!!ふぁっ!びっくりした…窓ガラスか…。よし、次は向こうも見てみよう!うぁぁあーい!! )」
窓ガラスに映る自分の姿に驚きながら、毛と尻尾を膨らませて掛け走り回っていれば、彼はファスナー付きのBOXを探り、何かを取り出せば転がしてきた。
「( ぎゃ、なにこれ!あ、ネズミ!!トマトとジャムごっこしよ! )」
転がってきた可愛いネズミを咥えて捕まえては、御前はトマト!私はジャム!のごっこをする為に、
ネズミを離れた場所に一度置いてから、
私も離れた後に再会の感動の為に走って、ネズミを抱く。
「( ジャムー!! )」
「( 楽しいのか……? )」
両手で捕まえるように抱いては口に咥えて、今度は別の場所に置き、また離れてから向かおうとすれば、彼の手元に近かったのかジャムを取られた。
「( あ、返して!トマトとジャムごっこしてるのに! )」
「( 投げて欲しいのか? )ほら 」
「( ジャムー!!!可哀想に!! )」
近寄って返してもらおうとすれば、大切なジャムを投げられて、追い掛けてから抱き着いて咥える。
「( ジャムは私が守ります )」
「 ん…( もう一回やってやろう )」
「( ジャムに謝るの?分かった… )」
そっと片手を向けて来た為に、ジャムをそっと手の平の中へと向ければ、彼は其れを眺めた後に、またポイッと投げた。
「( ジャムー!!また、なんてことを!! )」
「 フッ…( 犬みたいだな… )」
「( 今、彼奴…鼻で笑ったな!?酷い奴め…説教しなくては )」
ジャムを救出してから、ミナセの元に近づき、説教の為に口を開く。
「 ミィー!( ジャムは、ネズミのお友達だから仲良くするんだよ!そのアニメ観てないの?古いけどさー )」
「( 持ってきた…。また投げるのか? )」
説教の為に鳴いたせいで、口からポロッと落ちてしまったジャムにハッとした時には、ジャムが投げられそうになった為に、彼の反対側の手に攻撃をする。
「( ジャムを返しなさい! )」
「 っ……なんだ、この遊びは飽きたのか…? 」
カミカミとケリケリをすれば、やっとジャムを戻してくれた彼に、ジャムを咥えてちょっと離れる。
「( そうだ、このジャムちゃん。私のお友達にしよう!やぁー、ジャムちゃん。今日も小さいねー、可愛いねぇー )」
「( 猫がネズミに猫パンチしてる…。あぁ、これが…狩猟本能ってやつか… )」
片手で触ったり、反対の手で突っついて怒らせてみようとすれば、急に飛び掛かって来るジャムに驚いたりしながら、しっかりと遊んだ。
「( ジャムとトマトごっこ飽きた…やっぱり一人遊びはつまらないね。子供みたい… )」
幾分かして、ネズミを放置して毛繕いを始めれば、彼はそっと拾ってからファスナー付きのBOXへと戻した。
「( 猫は気紛れだな…。俺も、朝御飯にするか… )」
沢山走り回ったし、トマトとジャムごっこをして疲れたから、陽当りのいい窓際で横になって、仮眠する。
その間、彼が朝の支度をしたり、
ちゃんと食事をしてた事は知るはずもない。
なんせ、起きた時には…彼はカーペットの上に新聞紙を広げて、にらめっこしてたのだから。
「( 何故に4社分も… )」
県内の情報に詳しい会社、経済、スポーツ、エンターテイメントにそれぞれ特化した4社の新聞が並んでる事に驚けば、とりあえず一緒に見てみた。
「( んー……今、何年だろ……え…… )」
「 ……( 見えねぇ )」
新聞に書かれてる文字を見て、思考が一旦停止するも、彼が少しだけ次のページを捲れば、身を動かして移動し窓際に行き、改めて自分の身体を見る。
「( ……2123年って…。今って100年後??転生ってそんなに…時間掛かるの…? )」
100年で世界が…日本が、
どれだけ進化したかなんて、正直分からないぐらい、違和感はなかった。
「( いや…何かの間違いかも、もう少し確認しよ! )」
分かりやすいのは経済だろうかと、彼が開いてる新聞がそれだった為に、見る。
「( 確かにこの新聞…やけにフルカラーだ。てか…全然分からないんだけ…。だれ、この総理… )」
「 第三次世界大戦の終戦後…40年経過しても…、経済状況は不況だな。まぁ無理もないか…日本は、負けてんだから 」
「( 戦後!?今、戦後だったの!?だから、余り進歩してないの!? )」
大きな戦争で、技術の進歩が著しく止まってしまうのは分かる気もする…。
私が生きてた時も、穀物をバッタやコクゾウムシが食い荒らして、各地で反乱や内戦やら増えて…。
政治が壊れ、日本は円安は止まることを知らなかった。
全体的にバランスの崩れた世界だから、その怒りが募って戦争が大きくなったのは分かるけど…。
「( まさか、100年後なんて… )」
魂が何処で浮遊していたのか、それすら気になるぐらい…
未来に転生してしまったことに驚きを隠せなかった。
「 経済はこんなものでいいか、次は… 」
「( イエネコだから…気にしなくていいのかな… )」
フルカラーな新聞を見てると寂しくなりそうだから、ちょっと離れた場所でジャムと遊ぶ。
「( やっぱり血統書は高価だな…。そりゃ、殆どが雑種になった時代からの生き残りだからな… )」
「( ゙ラグドール゙…って、実は高価なのでは )」
ふっと、ブリーダーの家に来た人間達が、其々にお金がありそうな人達であったのは、確かだった。
彼は一体幾ら…支払ったのか、
それが少し気になりながら、余り考えるのは止めた。
「( まぁ、゙クティノズはこんなもんだろう )」
彼の元に戻り、新聞を見れば…
其処には、垂れ耳の犬と飼い主らしきものが写っていた。
そして文字には、世界最高齢を更新の文字。
「( どういうこと…。60歳って…?犬ってそんな、長生きだっけ?餌と医療進歩のおかげ? )」
こんなにも長生きなのかと思えば、
猫である私はもっと長生きなのでは…と思った。
「( 私…これから、60歳以上…ネコニートになるのかな。てか、この犬…戦争を乗り越えたんだ…すご… )」
「( やっと、人間の月日で11年か…まぁ、年々長くは伸びてるな。ラナは…長命ならいいのだが… )」
こっちをチラ見してきた彼の視線に気づいて見上げれば、いつもと違って眉を下げていた。
「( なんでそんな顔をするんだろう?長生きなら、いい事じゃないのかな )」
最初のコメントを投稿しよう!