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05 クティノスのネコ
彼の心境が余り分からないまま、
此処に来て、早くも2週間が経過した。
猫となった身体は、多少時間の進みが早いのか…、2週間と言われてもピンっとこない。
「( なんせ、何一つ…距離感が変わってない )」
朝8時頃にお腹が空いて起きて、彼がご飯をくれて、その後は毛繕いタイム、そして遊ぶ時間。
昼頃にご飯、毛繕いタイム、また遊んで寝る。
15時頃にちょっとした子猫の用のおやつを貰って、毛繕いして、遊んで、寝て…。
夜になったら、またご飯……と言う
ネコニートなルーティーンを繰り返してるのだから、これでいいのかと…迷うほど。
それでも彼は、まだ触るのに抵抗あるのか…
私が肩に登った時に誤って落ちかけた時以外は触れない。
あ、でも…トイレ後の肉球タッチは、
ちょっと触るかもしれない。
「( んー……なんでそんな、触らないんだろう?私から寄って、嫌がる感じでは無さそうだけど )」
ノートパソコンより進化した、透明な電子パソコンのような物を触ってる彼は、現在仕事中。
送られてきた内容に目を通してるらしいけど…。
「 ミュッ!( ネコは、そんな事…お構いなし!とやぁー! )」
軽々…ではないけど、晒してある脚が悪いと思いながら、脚に爪を立てて上って、ソファの上まで行けば、今度は背凭れから背中に掛けて乗る。
「( いないない、ばー! )」
肉球で目隠ししたり、首元に擦り寄ったりしても、彼は僧侶の様に無反応。
余りにも無反応だから、頭から下りて手元に行き、敢えて画面を邪魔すれば、やっと僅かに動いた。
「 ラナ、見えない。少し退いてくれ 」
「 ミヤァッー( いやー。そろそろ触れー。人間嫌いのネコになってしまうぞー )」
腕に擦り寄ってお腹を向けて横たわれば、彼は小さく息を吐き、指先で首下辺りから顎下を触れてきた。
「( ……指1本…やっとここまで進歩したかな )」
ちょっと目を閉じて受けていれば、直ぐに触れ合いは終わり、彼はまた画面の方を見てしまう。
「( もう少し触ってくれてもいいじゃん!ケチ!私は熱帯魚じゃないからな! )」
右手に着けてる高そうな腕時計を噛んでみたり、手首に抱き着いては脚で蹴って、文句を訴えても、彼はガン無視を決め込む。
「( もういいや…… )」
そして、やっぱりちょっかいを掛けるのが飽きて、生傷が絶えない手首を枕に眠りにつく。
彼の仕事が一旦終わって、動くまで此処に居るのも習慣になりつつあった。
「( ん? )」
「 嗚呼、宅配だな 」
「( 100年後の宅配って如何なってるの?気になる! )」
インターホンの音にぴこっと耳が動けば、彼は私が起きないようにそっと手首を抜き取り、そのまま部屋を出ていった。
「( 扉開いてる…はっ!これはチャンス!! )」
まだ配達員なのだろうか…。
そう、期待に胸を高鳴らせて廊下を出て、玄関先へと行けば、荷物を受け取ってる彼の足下をすり抜けて、見る。
「 此方にサインをお願いします 」
「 嗚呼 」
「( なんか…今思えば、外凄っ…! )」
離れた気にある民家はどれもカラフルで、一見外国を思い出させるような雰囲気だし、
季節関係無く、四季の花が咲いてる。
「( なんか聞いたな…未来は温暖化の影響で、全てがドームみたいなのに包まれるんだっけ。既に都心は…こんな感じなのだろうか。配達員の容姿と雰囲気からしてAI知能を持つアンドロイドかな )」
人間っぽい匂いがしなかった為に、きっとそうだと振り返ってから、その様子を見た後に見上げる。
「( ネコの視力じゃ無ければ…もっとハッキリ見えたんだろうなぁ……)」
「 カァッ!!!カァッ!! 」
「 ミャッ!!?( 急になに!? )」
カラスのようで、何処かサイレンの様な声に驚いて、一度飛び跳ねれば本能で走っていた。
「 嗚呼…雨鳥が鳴きましたね。これから雨が降るようです…どうしました? 」
「 俺…玄関、開けてしまっていたようだ。チビがいない!! 」
「 チビとは? 」
「 クティノスだ!ラグドールの! 」
「 クティノス…!?それは不味い、直ぐに探さないといけませんね! 」
私が居なくなったのをすぐに気付いた、ミナセは、部屋の戸締まりをしっかりした後に探しに走ったらしい。
そんな事が分かる訳もなく、彼方此方で鳴き始める、青みがかったカラスの様な大型の鳥が怖くて、走って逃げていく。
「( どっちに…行けばいいの!? )」
道路は十字路だらけで、まるで迷路の中に迷い込んだような錯覚を引き起こす。
真っ直ぐなのか、左なのか、右なのか、それすら分からないまま走り回っていれば、
次第にポツポツと匂いのない雨が降り始めた。
「( 冷た……!どっかに隠れなきゃ… )」
雨に濡れたくは無くて、隠れやすそうな場所を見かけ、茂みの中に入ってから鉢植えの側で縮まる。
「( これ、人工雨ってやつかな…。なら…いつか止むよね… )」
土砂降りの雨に代わり、その場に居ても泥が濡れて汚れ始めた為に、民家の軒下へと移動しては、積み重なった煉瓦の上に乗って、雨を凌いだ。
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〜 水無瀬 視点 〜
「 関屋!ネコの隠れやすい場所を教えてくれ! 」
゙え、どうかしたのですか?゙
走ったところであんな小さいネコが、簡単に見つかる訳もなく、すぐに腕時計に触れて通話機能を使い、関屋に聞く。
「 俺の不注意で脱走した。こっちは雨が降り始めたんだ。直ぐに配達員が雨を止めるように連絡しに向かったが…クティノスは雨が駄目なんだろ? 」
゙ダメ…というレベルは、ネコなので体温が下がりやすくて体調不良を起こしやすいという点ですが…。ネコが隠れるのは雨宿りが出来て、暗くて狭いところです。今、其方の地図情報からめぼしい所をピックアップしてみましたので探してみてください゙
「 ピックアップって…多過ぎるだろ… 」
ラナは、普通の猫じゃない。
クティノス…と言う、近年改良が進んでる新たな種類で、その特徴は見た目の美しさと儚い命。
そしで人間らしい容姿゙を持つ個体が、
希に生まれると言うもの。
「 とりあえず…全部探すか 」
最初は、科学者が新しいお偉いを決めるのに、第三者の意見がある方がいい…とかで
御伽などに出てくる麒麟をモチーフに、
遺伝子組み換えを繰り返して、偶々誕生した一頭の犬から始まった。
そこから一気に研究が進み、本来の猫や犬と同じ種類まで固定出来るようになった。
一昔…いや、今でも゙獣人゙として言われる場合もあるが、クティノスが獣人と違うのは…。
獣と人間が触れ合った時、一定時間だけ人型になる…というもの。
よくある…自分の意志や月を見て、なんてものではなく。
契約を交わした人間だけ…というもの。
それは人間が目に見えるものではなく、
クティノス側が、認めた人間で無いと駄目なんだ。
゙王を決める麒麟゙をモチーフにした、種類だから…。
俺は、ラナ…を本来なら連れて帰る気は全く無かったが、関屋が後々に告げた。
゙青ちゃん、クティノスの近いかも知れません。雄が…人になれないとしてもそれだったので。普通のラグドールと掛け合わせてしまったけど…もしかしたら゙
他の人間に一切見向きもしない…。
貰い手が見つからない…、見つかったところで不幸になる。
そんな事を言われたら引き取るしかなかった。
けれど、クティノスは短命。
それが嫌なんだ……。
「 ラナ!!!( だから何不自由無く、大切に…育てようと思ったんだ… )」
全てを洗い流す目的で降る人工雨の成分に、強い除菌効果のある為に、生傷に滲みて痛む。
だから、雨鳥が外に出ないよう忠告する為に鳴く。
100年と4年前に起きた流行り病や大きな戦争が無ければ、こんな事も無かっただろう。
関屋がピックアップした場所を見て回るも、姿は無く、焦りが募る。
「( クティノスは身体が弱い…。だから、常に一定の室内温度に設定してる空間じゃないと飼えないのに… )チッ…俺が、悪い…寝てるからと油断したせいだ… 」
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