ｐａｉｎ

「これで四人目ですか、元信者の不審死」

　新興宗教の元教祖の逮捕にいよいよ踏み切ろうという雰囲気の警察署。しかし別の問題が起きて今とても立て込んでいる。ベテラン刑事である佐久間と、部下は先ほど伝えられた事故の内容を確認した。
　信者だった女が交通事故で死亡した。人通りも多く、コンビニの監視カメラにも映像が映っていたので概要は簡単に確認できる。

　その女性は雑居ビルから気が狂ったかのように暴れながら飛び出してきた。そこにトラックが来てはねられたのだ。トラックの下に入り込んでしまって引きずられたので頭部挫傷、死亡が確認された。
　どう見てもトラックに過失は無い、速度は問題なかった。ブレーキが間に合わない距離で突然飛び出されたのだ、トラック運転手は運が悪かったとしか言いようがない。

「目撃者の証言では悲鳴をあげていたそうです。言葉ではなく、ひぎゃああ、みたいな」
「死亡した他の元信者たちと全く同じだな」

　この女性で四人目だ。教祖の逮捕間近となって急に元信者たちが不審な死を遂げている。今回の女性は自殺なのか事故なのか正直判断に困る。他の三人は明らかに自殺だった。しかし四人の共通点はとてもまともな精神状態ではなさそうだったということだ。
　助けてと叫びながらビルから飛び降りた男、もう嫌だと泣き叫びながら電車に飛び込んだ女。そして自分の体を滅多刺しにして失血死した男。この時家には家族がいて男は泣き叫んでいたと言っていた。

「計画的な自殺じゃなさそうなんだよな。突発的な行動だ」
「例えばこの宗教の幹部が裏切り者である信者たちに報復してる、とか。当時の洗脳状態が解けてなくて、もう死ぬしかないみたいな状況に追い込まれたみたいな？」
「その可能性もあるが、状況だけでは何とも言えないな。一つ言えるのは、元教祖の逮捕に何か関わっているとしか思えない。何せ亡くなったうち二人は訴訟起こした本人たちだ。果たしてこのまま逮捕していいものか」
「そうなんですよね」