pain

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 もしも逮捕に踏み切って元信者が大量に死ぬようなことはないだろうか? そんな空気が警察署内にも流れ始めている。だからといって逮捕しないわけにはいかない。それは仕事なのでやるのだが、不審死の調査がとても間に合わない。何せ逮捕状が出るまであと二日しかないのだ。しかも元信者全員の住所等わかるはずもない。 「もしも誰かが本当に接触しているなら、接触するツールがあるはずだ。あれから十五年、当時の信者たちも引っ越したり独立したり住所は変わっているはずだからな。女性なら結婚して姓も変わる」 「今で言うとSNSとかですかね?」 「そうだな……例えば信者しか知らないような具体的な内容を示して、当時の話を聞きたいですと募集をしていたら引っかかるかもしれないな」 「なるほど、調べてみます。時間はないですが」  急いでパソコンに向かう。しかし佐久間は長年の刑事の勘というやつが鳴り響くかのようだった。口にしたら刑事ドラマの見すぎだ、と揶揄われそうなので絶対に言わないが。 (宗教の関係者が関わっているのは間違いなさそうなんだが。なんだろうな、この底知れない不気味さは)  気が狂ったように死ぬことを選んでいる者たち。死ぬ苦しみよりも苦しいこととは一体何だろうか。 「神様にすがりたいと思ったことがないから、理解できないんだよなあ。困ったもんだ」  そんなことを考えていたがふとあることを思い出して目を見開く。この教団が表沙汰になったのは実は十五年前にも一度ある。当時は問題のある教団があるという通報からの小さな騒ぎだった。物をとられたまま戻ってこないということで、窃盗の疑いで捜査に来たらあっさり解散したんだったか。その時教団本部に調査に行ったのは自分だ。  そうだ。確か、教祖には息子がいた。
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