pain

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 助けて。助けてください。  この間から死んでる奴らみんなそう言っていた。……いや。十五年前、四六時中聞いていた言葉だ。  助けてください、救ってください。  病院に行っても治らないんです、痛くて痛くて本当に辛くて死にたくなります。  後遺症が治らないんです。痛み止めの注射も効かない、医者は注射を打ってこれで終わりですって言うだけなんです。俺はいつまでこんな生活を続けなければいけないんでしょう。大好きだった海にも行けない。  誰もわかってくれないんです。ただの頭痛くらいで甘えるな、頭痛薬でも飲んどけって言われるだけで。何も集中できない、何もできないのがこんなにも辛いのに。  他にもなんて言ってたかな。痛みから解放されたい、生きているのが辛い、どうか助けてください。そんな言葉を大量に毎日毎日聞いた。  あの活動の本部は自宅だった。だから毎日家に信者がいた。ウジャウジャと、大量に。  たかが数百万を払っただけで痛みから解放されて幸せな人生を歩んでいる信者たち。それなのに、今更詐欺だこの宗教はおかしいとほざく。教祖の男は悪い奴だと言ってくる。十五年も経って今更。十五年間お前ら全員幸せに生きていたのに。  許せるわけない。おいしいところだけつまみ食いしておいて、その支払いは全部他人に任せる。ほんと、どういう神経してるんだろうって思う。  十五年経って、今更俺の人生をめちゃくちゃにしようとしてる。やっと父さんに恩返しができるのに。ずっとこの時を待っていたのに。逮捕されたら会えなくなるじゃないか。許さない。  そんなことを考えながら、目の前に現れた人に会釈した。ああ、この人も懐かしいな。
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