pain

1/8
前へ
/8ページ
次へ
 今世間を騒がせているニュース。十五年前解散した、とある新興宗教が詐欺の疑いで捜査されている。高額な金の徴収が詐欺にあたるとして、当時の信者たちが訴訟を起こしたのだ。出版社などは当時の信者の話を載せる為、取材の募集がネットであちらこちらに見られる。 「星の救いの会 二等星の方のお話を募集しています」  そんな告知が目に入った。当時信者だったら一目でわかる「二等星」の意味。宗教の名前は何度も変わっていた。しかしそれはカモフラージュをするための作戦で、信者たちが使っていたのは「星の救いの会」だ。  そして信者に階級があって、救いをもらえるのが二等星だった。当時団結して他の人に絶対に詳細を漏らさなかった信者たち。それを考えれば等星があることを知っているこの出版社は、もうすでに他の信者の話を得ているという証拠だ。  話を聞いてもらえるならと連絡を取ってみると、すぐに返事が来た。しかも謝礼も結構な額が提示された。連絡を取り合って指定された雑居ビルへやってくると、出迎えたのは若い男性だった。 「こんにちは。今日は来て下さってありがとうございました」 「いえ。私の話が何かお役に立てれば」  有名チェーン店のコーヒーとスイーツが出されたので、ひとまずコーヒーをひと口飲んで気持ちを落ち着かせる。もう少しおしゃれなカフェなどで取材を受けると思っていたので、テーブルと椅子以外何もない部屋で少しそわそわしてしまうのだ。 「では、お願いします」 「はい」  そして女性は語る。星の救う会、通称「星会」の具体的な内容。 「病気などで体に痛みや苦しみがある人が入信していました。病院や薬でもなかなか治らず、気が滅入っていたからはまり込んでしまったのです」 「どんな活動していました?」 「高額なお金を払うと、まず教祖様と面談をします。そして神の化身という人に痛みをとってもらうのです」  長年頭痛に悩まされてきた。頭痛と言うとほとんどの人が「たかが頭痛」と理解してくれなかった。本当に頭が割れるように痛かったのだ。  そのせいでまともに仕事もできず、どんな薬も効かず。結局医療費が高くなり生活が苦しくなるので病院に行くのをやめてしまった。我慢するしかなかった、地獄のような苦しみだった。  そんな中この宗教を知って藁にもすがる思いだった、当時の全財産を差し出してようやく面談できた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加