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「あー……だから百代がきたのか」
胸中に横たわる疑問に答えることなく、一人完結してしまう。御玲が若干身を乗り出していることに気づき、足を組んで得意げに唇を釣り上げた。
「百代が来たってことは、奴は新人たちと一戦交えたんだ。そのとき新人の懐から技能球をスッた」
「そして正門から瞬間移動してシェルターに入った……というわけですか」
「あの技量だ。できても不思議じゃねぇだろ」
朧げながら新人たち正門前防衛班の状況が読めてくる。
双剣使いは全能度五百だかの手駒を引き連れて正門から攻めてきた。本来なら圧倒的な質で正門の守りをブチ抜くつもりが、想定していたよりも正門に配置されていた戦力は高く、正攻法では西支部を落とせないと悟る。代替案として手駒たちを囮にして新人の懐に入り込み、技能球を盗んだ。
おそらくだが転移魔法の技能球を盗めたのは、双剣使いにとっては幸運だったのだろう。新人たちの虚を突ければいい程度のものを期待していたら、期待以上の代物が盗めてしまった。百代、新人、ブルー、むーさん、使い魔たちという超高火力パーティの包囲網から脱するためにも、迷わず使った結果が今の状況だということだ。
百代が支援に来たのは、おそらく双剣使いを追いかけようとした新人の代わりに、双剣使いを止めると言い張って新人を言いくるめた結果と思えば、何もおかしな話ではない。
現状、正門前を陣取っているパーティのうち、怒りに燃える新人に真正面から向き合えるのは百代だけ。新人も口に出しはしないが、百代との実力差は本能で理解している。ますます納得のいく展開に思えてきた。
「とにかく俺たちじゃ、あの双剣使いは止められねぇ。ここは百代に任せて……ん?」
サポートに徹する。その結論に至ろうとした最中、再び思考の海にダイブする。そしてすぐに岸へと上がり、戦慄した視線を御玲に投げかけた。
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