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「はよー……兄さん。もう昼だけど」
一階です、というアナウンスとともに部屋の隅に設置されていたエレベータの扉が開かれる。そこから出てきたのは、これまたさっきまで惰眠を貪っていたであろう眼鏡の似合う愚弟―――流川久三男だ。
「あれ、澄連は」
「アイツらはまだ二階でごちゃごちゃやってて降りてこないが……それよりもお前……」
暢気にいつも通りのテンションで話題を投げかけてきた久三男だったが、俺の注意はコイツの背後に集中していた。
久三男が眠たそうな顔でエレベータに乗って地下からリビングであるこの部屋までやってきて、欠伸をブチかましながら俺に話題を振ってくる。そこまではいつも通りだ。なんら不思議じゃない、流川本家邸新館におけるモーニングルーティンである。
しかし今日はそのモーニングルーティンに反する存在が、久三男の護衛のように立っていたのだ。
「ソイツ……あのときの女アンドロイド……」
そう、久三男の背に立っていたソイツは俺や御玲、金髪野郎に百足野郎、そしてあくのだいまおうとパオングすら出張ってようやく倒せた元強敵、件の女アンドロイドその人だった。
あの緊急任務から早一ヶ月。もうそんなに時間が経ったのかと感慨に耽る一方で、女アンドロイドの姿に思わず見惚れてしまっていた自分に気づく。
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