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俺の仲間の中ではトップクラスの有能で、分家派の当主でもある流川弥平は、俺らが任務請負機関に就職してからというもの、巫市との国交樹立に必要な情報を得るため、巫市の長期密偵任務に勤しんでおり、ほとんど家に帰ってくることはない。
週一の頻度で分家から弥平印の報告書が霊子通信経由で届くくらいで、ここ数週間は声すら聞いていない状態だ。
本来は巫市という俺からすれば未知の国に出張ってもらっている手前、仕事を増やすのは居た堪れないというのが本音なのだが、今回の任務で抱いた違和感を放置しておくのは、なんとなくマズイ気がしたというか、なんだか盛大な裏を感じるというか、とにかくキナ臭かったので、忍びなさを感じつつも弥平に臨時密偵任務を頼んでおいたのである。
「しかし、凪上家の当主の下に全能度五百クラスの暗殺班……ですか。まあ、気持ちも分からなくはないですね」
「だろ? 格下が格上を従えるなんざ、普通あり得ねぇ」
「ありえるとしたら更に格上の何者かが、凪上家の当主に上位戦力を下賜していた……ですね」
箸をおき、俺はおもむろに煙草を蒸かす。
暴閥の間には、共通普遍の原理が一つだけ存在する。それは弱肉強食である。
強い奴がより上位に、弱い奴がより下位に座す。その``格差``こそが、その家の、その当主の格になる―――というものだ。
凪上家は中威区では確かに有力な暴閥だったが、それはあくまで中威区での話。武市全体からすれば中堅どころであり、いわば中位暴閥と呼ばれる存在である。
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