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ただでさえ技量面で敵わないのに肉体能力でも負けているならば、手に届く次元じゃない。それこそ戦いがまだ成立しそうなのは百代くらいなものだが、流石に神代の世界から存在する身使いに、人の巫女でしかない彼女が敵うものなのだろうか。
いくら百代でも本当の意味で人智を超えた存在に敵うはずもなし、百代安全神話は一気に崩れ去ることになるのだが―――。
「おそらく、それはないのね」
きっぱりとハイゼンベルクは払い退けてくれた。その答えに、場にいる誰もが静かに胸を撫で下ろす。
「私の見立てでは、あの双剣使いはただただ戦闘に特化してるだけの人間なのね。霊力量も支部請負人どもとは比較にならないほど高いけど、それでも転移魔法を使って縦横無尽に戦えるほどのポテンシャルは感じられないのね」
「なるほどなるほど……人外が人に化けてる可能性は?」
「もしそうならお前たちは既に死んでいるのね」
答えの分かりきった疑問を自分の中で再確認するかのように頷いた。
仮に双剣使いが人に化けた人外だったとしたら、隠していた力をさっさと解放して百代なりが応援に来る前に全員始末すればいいだけの話で、やろうと思えば証拠を一切残さずといった離れ業も可能だろう。それをしなかったということは、双剣使いにはそれだけのことができないということであり、その戦闘力はあくまで人智を越えるものではないと暫定できる。
「となるとどうやって転移魔法を使ってからすぐ戦うなんて状況を作り出せたか、だよな」
いずれ澄男たちも来るだろうし、時間経過で双剣使いの脅威度は下がると見て間違いはない。だが自力で転移魔法を使っていないとするならば、如何にして転移魔法を使ったのか。思いつく手段は、たった一つだけだ。
「技能球……しかないんだが、転移の技能球なんて普通どこにもないんよな」
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