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思いつく手段が一つだけなのだが、やはり問題はある。
転移魔法の技能球。あれば確かに便利なことこの上ない。巷に存在すれば、それこそ公共交通機関に革命を起きている。
いわば今の時代にとって``神器``に等しい代物。武市民全員が喉から手を出し合って醜く殺し合ってもおかしくないほどに、その価値は未知数レベルで高い。
「``顕現``の技能球なんて、作れるヒト族が存在するのね?」
「いるとしたら……流川ぐらいだろうな」
「ジークが言っていたのね、確かヒト族最強の戦闘民族……だったのね?」
「俺ら請負人には一生縁のない奴らだな」
言ってみた手前、脳味噌の片隅に置いてあるゴミ箱に放り投げる。
流川家。大陸八暴閥の一柱にして、武市に存在する全ての暴閥の頂点。武市の建国者でもあり、二千年にわたって続いた``武力統一大戦時代``の覇者。
暴閥にとっては畏敬の念を持つ者もいれば嫌悪する者もいる、良心的な意味でも悪心的な意味でも暴閥界隈では常にトレンド入りしている勢力だが、こと請負人には生涯無縁の存在と言っていい。
まず関わることがない。流川は武力統一大戦時代を境に人類社会との交流を断絶しており、終戦後三十年間は流川の血縁者を目撃したという者は皆無である。
それにたかが請負人と暴閥界の王では、格が違いすぎる。任務請負機関最強と謳われる``三大魔女``様でさえ会うことが叶わないのだ。少なくとも北支部暮らしが板についてしまっているような者たちには、風に噂に聞く程度でその一生を終えることになるだろう。かくいう自分だって、例外じゃない。
「まあ可能性の話だ。先祖代々の秘宝を現代まで隠し持ってる暴閥とかの線もあるだろうし、個人的にはそっから盗んできた線が色濃いと思う」
自分の考えが虚しく精神世界に響く。
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