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「……とりあえず、ズボン履いてもいいか」
「やーだー! まだ舐めるんだもーん!」
「よせよせ、それ以上は映せなくなっちゃうから。色んな意味で大変なことになっちゃうから」
息子にかぶりつこうとする少女を力ずくでどかし、下着とズボンを履き直す。ベッドから床へ弾き出された少女は床の上で転がりながら駄々を捏ねていたが、相手にするだけ面倒なので無視した。
カーテンをかっ開く。雲一つな青空、今日は晴天かと気分を上げるが、耳に入ってくる怒号や爆音で、その気分は霞となって消えていった。
此処、任務請負機関西支部は中威区西部都心に存在し、中威区史上最悪の治安を誇る闇都市。昼夜問わず紛争や虐殺の火花が飛び散り、安全などという言葉から程遠い世界である。
習慣とは恐ろしいもので、朝から爆音が鳴り響くなどもはや日常と言っても差し支えなく、慣れてしまえば爆音と怒号鳴り止まないクソみたいな所でも二度寝をかませるくらいには、メンタルが鍛えられる場所である。
実際、窓を開いて景色を眺める折、菩薩のような顔を浮かべられるくらいには、心の余裕ができているほどだ。手元に珈琲でもあれば、カップ片手に一口含むくらいのことはできただろう。
「ぶー。まあいーや。早くご飯行こー?」
さっきまで床で転げ回って拗ねていた少女が、口を尖らせながら徐に立ち上がり、部屋を出て行こうとドアへと向かう。素早く奴の背中を取り、肩を鷲掴んだ。
「その前に装備しろ装備。色々丸出しだから」
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