プロローグ:異世界転移先が激戦区だった少年のモーニングルーティン。

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「あら、ジーク。やっと起きたのね。遅いのね!」  部屋から出てきたのも束の間、間髪入れず横槍をこめかみにぶっ刺してくる輩が一人。  気怠げに槍を投げてきた相手へ視線を移すと、ぷかぷかと空中を浮遊する、青白色に塗られたふんわり髪の幼女が腰に手を当て、こちらを睨んでくる。パジャマと似たり寄ったりの服装に、天使の羽をデフォルメ化したかのようなものを背中に生やしたその幼女は、頬を膨らませ、不満げな顔を近づけてきた。 「全くいつまで寝てるのね? だらしない奴なのね!」 「そうは言うがなベル……コイツがまた俺の寝床に潜り込んできたんだぜ? それも裸で」 「仕方ないじゃーん、ボク寝相が悪いんだしぃ?」 「だとしたら寝相が悪いってレベルじゃねーよな、うん」 「はしたない奴らなのね、ヒト族は同性同士でも行為に及ぶのね?」 「ちょっと待てベル、俺をそこらの変態請負人と一緒にすんな。俺は至って正常だ。普通という肩書きを胸に抱く、心清い少年だぞ」 「もう遅いよ、ジークの初めてはボクが全部食べちゃったから」 「悪いが俺の同意がないのでノーカンだ。俺は童貞だと断固として宣言する!」 「その年でドーテーとかダサいよ」 「どっちにしても破廉恥なのね!」  本当、やれやれだ。朝から空中浮遊幼女と年頃の少女にしか見えない男の娘を相手にしなきゃならないのは、何かの拷問だろうか。ラブコメだと両手に花な立ち位置なのに、いざ当事者になると疲労感が半端ない。ラブコメは傍観者だからこそ楽しめるコンテンツなのだと再認識させられる。
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