プロローグ:異世界転移先が激戦区だった少年のモーニングルーティン。

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「そうだ、お前が馬鹿なこと言ってるから忘れてたのね」 「さりげなく忘れてたの俺のせいにすんな」 「今日で帰ってくるのね。マザー・ギガレックス、ロビーじゃ騒ぎになってるのね。早く支度したほうがいいのね」  本格的に額へ手を当て、天を仰ぐ。俺のせいにすんなと言っていたが、前言撤回。俺も忘れていた。  確か復帰が今日だったか。ただでさえ今の状況でも面倒なのに、輪にかけて面倒な奴が帰ってくる。支部内で友達と言える仲間が少ない現状で、交流のある奴が姿を現してくれるのは嬉しいのだが、どうして俺の周りには問題児しか集まらないのだろうか。類は友を呼ぶっていうことわざがあるが、俺はいたって普通の少年って自負がある。  ``この世界``でも、``元いた世界``でも。 「やれやれ……んじゃ、さっさと朝飯食って顔洗って支度して、あのうるせぇ奴を迎えに行くとするか」  さんせー、と言って左腕に抱きついてくる男の娘―――ブリュンヒルト、そして本当トロい奴らなのね、と頰をリスのように膨らませて拗ねる幼女―――ヴェルナー・ハイゼンベルクを右側に携え、今日も今日とて任務前の腹拵えを行うべく食堂へと向かう。  その後、任務請負証から特待受注任務の通知が本部から来るのだが、それは三人で飯を食らいアホな雑談に花を咲かせていた、数十分後の事である。  やれやれ、何かどデカい、それもクッソ面倒なことが起きそうな予感しかしないのだが、何事なく一日が過ぎ去ってほしいという俺のささやかな願いは、当分叶いそうになさそうだ。
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