21.懺悔

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俺も一年飛び級で学校を卒業し、研究所に就職した。別邸に住みたいと言って家を出たのもこの頃だ。職場でも家でも父と顔を合わせるせいで、取り返しのつかないくらい関係が崩れてしまうことを恐れたのだ。 十年も経てば、もう母が生きているかどうかさえ怪しんでしまう。新しい生活に慣れても、時おりそんな不安に襲われた。 あの事件の後、父は転移のきっかけとなった機械を壊した。「やはり魔素を集める機械を作るなんて間違っていた」と言って。でも、突き止めた座標を活用しての研究は密かに続けていた。 その結果……地球からの転移者が増えてしまった。年に一人程度というペースは変わらないが、転移元が二度に一度は地球。しかも、黒髪黒目のニホン人ばかりだ。 俺も働き始めてからはその研究に協力していた。毎回あの公園から転移してくる訳ではないようだが、同じ国なのだ。上手く行けば母も帰ってくるかもしれない。 ただ、転移してくる人を見るたび、どうしても罪悪感は拭えなかった。 通常の研究は続けているものの、座標に関しては沈黙を貫いている。ニホン人ばかり転移してきてしまうのは明らかに俺たちのせいだ。 そんなときに転移してきたのがメグだった。今回も黒髪黒目の地球人、しかも二人同時に来たと聞いて見に行ったとき、唖然とした。 メグが来てくれたらと願ったことがないとは言わない。でも十二年も経っているのだ。 俺の初恋をたった一日で奪っていった張本人が目の前にいて、情けなくも動悸が止まらなかった。嬉しい。でもどうしよう。俺のせいだ。 転移してしまったことでメグの人生をめちゃくちゃにしてしまったのかと思うと、今までやってきた自分勝手な行動を全て後悔する羽目になった。それでまた父と衝突してしまった訳だけど…… どうしてもメグのことが気になって、職員たちの噂話に耳を傾けてみれば、一緒に来たやつが恋人だというから死ぬほど落ち込んだ。落ち込む資格なんて全くないのにな。 それでも運良く雇用関係になって近づくことができて、俺は浮かれていた。 メグは俺のこと、全く覚えていないみたいだけど……そりゃそうだ。俺にとっては衝撃的な一日だったけど、メグにとっては偶然見つけた迷子の親子を一晩泊めてやっただけに過ぎない。 メグに思い切って聞いてみたい気もしたけど、そうなると俺がどうして地球にいたのか説明しなければならないことになる。
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