22.知らない天井

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同じアルファなのに、リアンの方が優れていて見下されている。みんなそう思っている……という被害妄想をずっと抱いていたらしい。挙句の果てに迷い人のかわいい(?)オメガを囲い、奇跡的にできた恋人さえあいつのことを憧れだと言う。 飲み屋で出会った迷い人のキリトにそれを零すと、深く同調してくれ、煽られた。金に困っていたキリトに報酬をチラつかせれば積極的に協力もしてくれて、素行の悪そうな連中に声を掛け犯行に至ったそうだ。 僕の生活パターンはかなりわかりやすい。オーエン経由でそれを把握したラハーヌは犯行計画を立て、怪しい薬を手に入れて実行した。 僕はまんまと引っかかったわけだが、拉致された現場を目撃してリアンと警察に知らせてくれた人がいたらしい。僕がここへきて間もない頃、その裏路地で会ったことがある女性のカップルだという。たぶん急な発情期で番を待っていた人かな? なぜリアンに?と思ったけど、迷い人の僕はリアンとセットでそれなりに知られているらしい。おかげでリアンが一番はじめに到着して助けてくれたのだから、感謝してもしきれない。 あとは覚えているとおり、リアンがその場にいた全員を倒して、しかしながらその間に僕が負傷してしまったという訳だ。リアンが話を聞いたとき一緒にいたディムルドから話がスパ・スポールのみんなにも伝わり、有志が集まって捜索に加わってくれたみたいだ。 僕の応急処置にも多くの人が協力してくれていたようで、本当に申し訳ない。特にターザは的確な応急処置の一番の功労者らしい。 「あのときはメグムくんが死んじゃうんじゃないかってみんな真っ青だったけど、二人の協力プレーには胸が熱くなったな〜!」 「協力プレー?どういうことですか?」 「ターザって人がメグムくんに心臓マッサージをして、リアンが人工呼吸したんだよ。あれあれ、まだ聞いてなかった?」 「人工呼吸……」 そんな風に考えるのも馬鹿らしいと思う。でも……でも! それって、リアンの唇が僕の唇に触れていたわけで……なにも覚えていないのに、自分で唇に触れて、それを想像して真っ赤になる。 僕に負担をかけないようにとみんなが早々と帰ってしまっても、夜になるまで僕はひとり悶えてばかりいたのだった。
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