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沈みゆく陽の光が、取り残された小さな雲達を蛍光オレンジに染めてゆく。
一回戦負けで大した運動もしていない筈なのに、アスファルトを踏みしめる私の足は何だか重い。
「あー腹減った。何か食ってこーぜ」
男子も今日が部内戦だった筈だ。
軽やかに笑顔を見せる遠藤君は、きっと結果が良かったんだろう。
「行く、行く」
それに明るく応える芽依ちゃんも、いつも通り高2の中ではトップだった。
「西野、最終セットのスマッシュ綺麗に決まったな」
有川君が振り返ると、ワンコのようにクリリとした二つの目が夕日を返して明るく輝いた。
あの試合、見られてたんだ……。
「ちゃんと決まったのはあの一本だけです。あとはボロボロでした」
「でも着実に実力つけてきてるよ。西野は基礎練も手を抜かないから」
「そうでしょうか……」
私は小石の転がる地面に視線を落とす。
「ね、たまには裕菜も寄って行こ?」
芽依ちゃんが私の腕にその手を絡ませる。
「ごめんなさい。私には純太朗さんとのデートがありますから」
私が丁重にお断りすると、芽依ちゃんは困ったような笑顔を見せた。
そう、私には大切な彼氏、純太朗さんがいるのだ。
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